吉田麻也はなぜ、新天地にアメリカを選んだのか? 「ヨーロッパの都でやれることは、ほぼなくなってきた」 (4ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko

【お金よりも人生がリッチになることが大事】

── なるほど。

「違いで言うと、たとえばイタリア人とイギリス人って全然違う概念で生きているんですよ。これ、よく話すんですけど、イギリス人は全部がオーガナイズされてないとイヤなんです。対して、イタリア人はオーガナイズという概念がないというか、練習は10時開始って言っているのに10時2分にきても全然平気。

 僕も(サンプドリア時代に)15分くらい遅れて練習に行ったことがありますけど、何も言われなかった。イギリスとかドイツなら罰金ですよ。でもね、イタリア人はエスプレッソマシンが壊れていたら、ものすごく怒る」

── まるで小噺(こばなし)ですね(笑)。

「っていうね(笑)。まぁサッカー選手って、選手でいられるのは長くても20年くらいですよね。すごい大事な時期なんだけど、人生100年時代って言われている今、その5倍くらいはあると考えると、やっぱり人生が豊かになることがいいなと。お金がリッチになる・ならないよりも、人生がリッチになることが大事かなって。

 だから、アメリカに来ることの抵抗も僕は少なかった。アメリカに行ったら、また新しいことも学べるんじゃないか。なんだかんだ世界経済をまわしているのはヨーロッパじゃなくてアメリカだよなとか、なんでアメリカなんだろうとか、とにかく見てみたいと思ったんです。

 人間として新しいことを学べるし、ロサンゼルスは住み心地もいいらしいし、MLSもすごく成長しているし。その成長の機運に自分が乗ったら面白いんじゃないかって思ったんですよね」

(後編につづく)

◆吉田麻也・後編>>岡崎慎司や長谷部誠の引退「心を削られる部分はすごくある」


【profile】
吉田麻也(よしだ・まや)
1988年8月24日生まれ、長崎県長崎市出身。2007年に名古屋グランパスの下部組織からトップチームに昇格。早々にレギュラーの座を掴み、2008年には北京五輪代表にも選ばれる。2010年1月〜VVVフェンロー、2012年8月〜サウサンプトン、2020年1月〜サンプドリア、2022年7月〜シャルケ04でプレーしたのち、2023年8月にMLSロサンゼルス・ギャラクシーへ移籍。日本代表としてワールドカップに3度(2014年・2018年・2022年)出場し、通算126試合12得点。ポジション=DF。身長189cm、体重87kg。

プロフィール

  • 了戒美子

    了戒美子 (りょうかい・よしこ)

    1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。

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