吉田麻也はなぜ、新天地にアメリカを選んだのか? 「ヨーロッパの都でやれることは、ほぼなくなってきた」 (3ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko

【かつての僕は『イギリス至上主義』だった】

── チチャリートがセビージャからLAギャラクシーに移籍が決定した時、家族に電話をかけている動画を見たことがあります。その動画でチチャリートは「欧州でのチャレンジは終わった。キャリアのフェイズが変わるんだ」って号泣していて。吉田さんには、そういう寂しさや複雑さはなかったですか?

「ありましたよ。もちろんそれは、ヨーロッパからこんな遠くに来るというのはものすごい決断です。選手からしたら、欧州の市場から外れるっていうのは都落ちですし。でもさっき言ったように、その『都』でやれることは、ほぼなくなってきた」

── かといって、たとえばマンチェスター・シティのようなトップクラブからのオファーは可能性が低い。

「現実的にはないですよね。僕は割とプレーも、気持ちに左右されるタイプじゃないですか?」

── わかりやすいタイプなんですよね。

「身体以上に気持ちが乗らないと、続ける理由が見つからないんですよ。サウサンプトンから出る前までの僕は『イギリス至上主義』だった。イギリスこそがもう絶対だって思っていた。でも、イタリアに行っていい意味で自分の固定概念が壊されて、国を変えることの抵抗感がそこでなくなったんですよ。

 同時に、どこに行ってもやっぱり外国人だから、ネイティブにはどこまでいっても勝てない。だから、ネイティブに勝つためには違う武器を持たないといけない。で、自分の武器は何かと考えた時に、移籍することで経験値を蓄えることが自分の武器になるかなって思ったんです。あとはシンプルに、イタリアに行って戦術的な部分を本当にものすごく学んだんですよ」

── イングランドのキックアンドラッシュ以外のサッカーがあるんだと(笑)。

「あと、ハイプレス以外のサッカー(笑)。だから今、すごいそれが生きているんです。今のグレッグ(・ヴァニー/LAギャラクシー監督)は、ものすごく止めてつなぐ。プレスが2枚で来たら3枚にする、3枚なら4枚にする、みたいなことをタクティカルにやる。国を変えると、そんなサッカーでの違いにも気づくことがあるんだと」

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