NEC佐野航大の夢は「いつか日本代表で兄貴とダブルボランチ」 オランダ1年目でブレイクした20歳の未来は無限大 (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru

【オランダの日本人選手でベストプレーヤー】

 佐野航大という名がオランダ全国区になったのは、2月27日に行なわれたKNVBカップ準決勝のカンブール戦だろう。ボランチで出場した佐野は強度の高い守備と巧みなゲームメイクを披露したうえ、延長前半9分にはNECをファイナルに導く決勝ゴールを決めた。

 試合中、私はとなりの席にいた『デ・テレフラーフ』紙のユルン・カプタインス記者とこんな会話を交わしていた。

「今日の佐野はまるでダービッツ。ピットブルだ」(筆者)
「そのとおりだな。テクニックなら佐野のほうがはるかに上だぞ(笑)」(カプタインス記者)

 3日後のエールディビジ第24節・フォレンダム戦でも、佐野はゴールを決めた。この時期のX(旧Twitter)に「佐野くんがNECにアジャストしてきたみたい。岡山時代を思い出す」といったニュアンスの投稿があり、それが目にとまったので、佐野に直接聞いてみた。

「そうですね。岡山でも2022年シーズンの後半戦からスタメンで出て、大分戦(7月10日)や町田戦(9月4日)で点を取ってレギュラーに定着し、そこからU-19日本代表(U20アジアカップ予選で佐野は4戦中3試合に出場)に行って、もう一段階成長できました。岡山に戻ってからも点が取れて、チームも勝って信頼を掴めました」

 オランダメディアが佐野への注目度を高めたのもこの頃(2024年3月)。『アルへメーン・ダッハブラット』紙は3月8日付の紙面で、ロヒール・マイヤー監督とベテランMFチャロン・シェリーのコメントを交えて佐野を特集した。

「航大はオールラウンダー。攻守において1日中、走り回ることができる。そしてとても器用だ。彼をMFに置くかどうかは、うちがどの選手を使えるか、相手チームがどこかによる。フィジカルがもっと強くなったらMFに定着するだろう。航大にはすばらしい未来が広がっている。右ウイング、左ウイング、10番、8番──どこでも価値を示しているからだ」(マイヤー監督)

「スパルタのふたり(斉藤光毅、三戸舜介)を見ればわかるように、日本人選手は器用で俊敏。私が思うに、エールディビジの日本人のなかで、佐野航大が現時点でベストプレーヤーだ。彼はスーパータレントで、ビッグプレーヤーになるだろう。あと1〜2年、NECでプレーして、すばらしい移籍をしてほしい」(シェリー)

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