橋岡大樹のプレミア移籍も実現 シント・トロイデンはいかにして日本に欠かせぬクラブとなったのか

  • 中田 徹●取材・文 text by Nakata Toru

シント・トロイデンCEO立石敬之インタビュー前編

「シント・トロイデン」という名前を聞いて、いまやサッカー好きで知らない者はいない。

 アーセナルのDF冨安健洋、リバプールのMF遠藤航、ラツィオのMF鎌田大地、スタッド・ランスのFW中村敬斗と、欧州トップリーグに次々と日本人選手を送り込み、今年1月にもDF橋岡大樹のプレミアリーグ(ルートン・タウン)移籍を実現させた。

 現在も6人の日本人(GK鈴木彩艶、DF小川諒也、MF山本理仁、MF藤田譲瑠チマ、MF伊藤涼太郎、FW岡崎慎司)が在籍し、日本代表にも多くの選手を輩出している。

 ベルギーの小さなサッカークラブは、いかにして日本に欠かせぬ存在となったのか。チームを統括する立石敬之CEOに話を聞いた。

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立石敬之CEOにシント・トロイデン成功の秘訣を聞いた photo by STVV立石敬之CEOにシント・トロイデン成功の秘訣を聞いた photo by STVVこの記事に関連する写真を見る── 2017年秋に合同会社DMM.comがシント・トロイデンを買収しました。当時、ベルギー国内の反応・評価はどんな感じでしたか?

「評価があるとかないとか、そんな話ではなかった。何者かがやってきてベルギーのクラブを買収し、『こいつら、なにをしでかすんだろう』『アジア? 日本人? サッカーできるの?』という、ほんとそのレベルでした」

── 日本の企業がお金だけ置いていくだろうと。

「その逆。『日本の経営資本が入っても、シント・トロイデンは3年で潰れるだろう。日本人の経営者にサッカーなんかわからない』という日本人への先入観がありました。

(DMM主導の経営が始動した)1年目の2018-19シーズンは首位争いをして、4位でウインターブレイクに入る快進撃。その後、2019年1月のアジアカップに冨安健洋(現アーセナル)や遠藤航(現リバプール)を日本代表に出したことでチームの調子が落ち、他クラブの嫌がらせを受けたりして勢いを失いました」

── どんな嫌がらせだったんですか?

「レギュラーシーズンで6位までに入ると『プレーオフ1』に進むことができます。しかし、1月か2月のベルギーリーグ理事会の議案に『スタジアムの人工芝についての可否』という項目が載って、『シント・トロイデンのスタジアムは人工芝だが、そこでプレーオフ1の試合をしてもいいものか』という話になりました。

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