大久保嘉人が対戦して嫌だったDF5人を語る「すね当てが半分に割れた」「一番イライラさせられた」相手とは? (5ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【開始10秒で動けなくなってしまった】

1位:ロベルト・アジャラ(元バレンシア、サラゴサほか)

 アジャラもコロッチーニと同じアルゼンチン人で、バレンシア時代に対戦しました。試合開始のホイッスルが鳴って、相手のセンターバックのところへ行ったら、思いきりすね当てのところを「ドン!」と蹴られたんです。

「お前動くなよ。動いたら行くからな」みたいな感じでやられた時は、もう動けなくなりました。それが試合開始10秒くらいですよ。それからはボールが来るたびにアジャラが来るんじゃないかと後ろを見なければいけなくて、それでボールを見失ってミスしたり。

 アジャラは激しく来ることで有名で、そうしたイメージがあった上で実際にやられたので、余計に怖くなりました。彼は身長もない(177cm)し、ゴツいわけでもないので、とにかくそういうことでまず相手から優位に立とうとしていたんだと思います。

 背を向けていると、アキレス腱のところをよく蹴ってきて、ずっとそんな駆け引きをしていました。

 日本人でそんなことしてくる選手は当然いないし、他の海外の選手を含めてもそこまでやってくるのはアジャラくらいでした。とんでもないやつだなと。

 僕は彼と勝負したくなくて、サイドとかに行っていました。でもその時点で彼の勝ちなんですよね。だから僕はちょっとビビって、逃げちゃっていたなと思います。

 このランキングで選んだのは激しい選手ばかりですけど、そういうDFは本当に大事だし、貴重だと思います。サッカーを知っていないとそうしたプレーはできないし、自分に自信があるからできる部分もある。また、自分の弱いところを突かれないための術でもあるんですよ。

 アジャラのような激しさは、南米の選手の特徴でもあると思うんですけど、アルゼンチンはとくに激しいですよね。カタールW杯でもそうでしたけど、あの泥臭さはアルゼンチンらしさと言えると思います。

 アジャラはそのなかでも特別で、本当に一番"怖い"という言葉が当てはまる選手でしたね。

大久保嘉人 
おおくぼ・よしと/1982年6月9日生まれ、福岡県出身。国見高校時代は3年時に全国高校サッカー選手権を含む高校3冠を獲得。卒業後はセレッソ大阪を皮切りに、ヴィッセル神戸、川崎フロンターレ、FC東京、ジュビロ磐田、東京ヴェルディでプレー。J13年連続得点王(2013-15年)、J1通算191ゴールの最多得点記録を持つ。欧州でもマジョルカ(スペイン)、ヴォルフスブルク(ドイツ)でプレーした。日本代表では2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯に出場。2021年に現役引退後はタレントとして活躍している。

著者プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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