久保建英の弟も在籍 レアル・ソシエダを支える異色の育成組織「スビエタ」とは? (2ページ目)
【グリーズマンも発掘】
その日、久保の弟の姿はなかった。
スビエタ関係者は、ユース年代の選手たちを大事に扱っている。だが、甘やかすことは一切ない。たとえどれだけ才能があっても、言動に問題を抱えている場合、チームに加えることはないという。「サッカーだけうまければいい」というのはあり得ない。基本的に文武両道。何より人に対する敬意を重んじ、連帯して物事に当たる行動規範は欠かせない。
「Solidaridad(連帯)」
それはラ・レアルの本質で、仲間を助けることによって自らも助けられる。念のためにつけ加えるが、連帯は「なかよしこよし」ではない。むしろ、選手それぞれの戦う責務と同義だ。
「人の悪口を言うような選手は、絶対に大成しません」
エチャリは、ラ・レアルの理念を語る。
「なぜならフットボールはチームスポーツだからです。もしも消防隊員たちが日頃から陰口を言い合い、仲間になってなかったら、火事場で火を消し止めることはできますか? ピッチの選手たちも同じことですよ。勝手なふるまいは許されない。そこはとてもシンプル。最後まで戦い抜ける選手は、やはり人間性を感じさせます」
1989年夏、ラ・レアルはバスク人選手純血主義を捨てている。アイルランド代表FWジョン・オルドリッジと契約。外国人選手の力も借りることで、戦う方針に切り替えた。それ以来、むしろスビエタは重要性を増すことになったという。指導者が外国人に対抗できる人材を育てるために手を尽くし、選手が外国人に負けないように結束し、土台を固めた。
スビエタが育てたのは、地元のバスク人選手だけでない。フランス代表アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)のように、それまで他のクラブでは見向きもされなかった外国人選手の才能を探り当てた。フランス人ル・ノルマンも同じケースと言える。19歳の時にフランス2部のクラブで戦力外通告を受け、レアル・ソシエダBに入団。2年半の下積み後にトップ昇格し、スペイン国籍を取得後、今や代表に選ばれるまでになった。
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