橋本拳人「W杯の日本代表については...今は語りたくない」 苦境でもスペイン挑戦を続行 「やめた時にサッカー人生を後悔したくない」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【スペインへの適応と失意】

 橋本は世界と遭遇した。叩きのめされる感覚があった。それは望んだ苦しさだったと言う。

 スペインに適応するために、やれることをやった。スペイン人は選手同士のコミュニケーションを大事にするので、できるだけ同じ時間を共有した。卓球やダーツに興じ、お互いの家を行き来し、スペイン語にも向き合った。スペインでは遠征は二人部屋が基本で、「メッシやスアレスも二人部屋で友情を深めてピッチで躍動した」と聞き、狭い部屋でアフリカ人選手と寝食を共にした。

「ケント、チームに残れよ!」

 シーズン後、チームメイトや監督からそう言われるほど信頼されたのは、積極的な姿勢の賜物だ。

「自分はそんなにワイワイやるほうではないんです。でも、スペイン人は少しでも時間が空くと、集まっておしゃべりするのが好きで(笑)、性格を変えてもスペインに馴染もうとしたから、そのパーソナリティは評価されたのかもしれません」

 橋本は笑顔で言うが、同時に悔しさも張りついていた。昨シーズン、ウエスカは前半戦こそ昇格圏で粘っていたが、後半戦は崩れ、失意の15位に終わった。

「チームの戦い方とか、もう少しつなげてとか、(言いたいことは)いろいろありますけど、結局は結果が出なかったので......。自分自身、練習では一番でも、試合ではすべてを出せていなかったと思います。簡単にやれるはずのことができなかった。例えば、FWがそこで落としてくれたら、簡単に次のプレー展開もさせられるのに、とか......。必ず1部に上がるつもりでやっていたから、それが難しいとなった時、気持ち的には......」

 橋本は、幾度か語尾を詰まらせながら語った。本当のところは、現在の心境を明かすのも本意ではないのだろう。本人には不本意なスペイン1年目だった。日本代表として最後の逆転にかけた挑戦でもあったが、E-1選手権のメンバーには選ばれていたものの、カタールワールドカップ本大会のメンバーからは外れた。

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