柴崎岳のスペインでの7年をどう評価するか 明暗を分けた「どこもできる」技術
9月1日、鹿島アントラーズはMF柴崎岳(31歳)との契約合意を発表した。7シーズンぶりの古巣への復帰になるという。常勝を誇った鹿島の歴史を知り、海外で経験を積んできた選手だけに、"タイトル奪還のリーダー"としてこれ以上ない補強と言えるかもしれない。
振り返ると、柴崎にとって7シーズンを過ごしたスペインでの挑戦とは何だったのか?
スペイン2部のレガネスから鹿島アントラーズへ復帰した柴崎岳この記事に関連する写真を見る 2017年1月、クラブW杯のレアル・マドリード戦で2得点を決めるなどして注目された柴崎は、スペイン、ラ・リーガでの挑戦をスタートさせている。テネリフェを皮切りに、ヘタフェ、デポルティーボ・ラ・コルーニャ、レガネスと、その主戦場は2部だった。そのことを否定的に捉える人もいるかもしれない。
しかしながら、7シーズンもスペインでプレーできたこと自体、称賛に値する。実際、これまで日本代表レベルの選手たちが数多くラ・リーガに挑んできたが、ほとんどが1、2年で"構想外"と返り討ちに遭っている。スペイン2部で昇格をかけて戦うシーズンは、日本で考えられている以上に濃密である。J1やスコットランドリーグ1部よりも、生き残るための技や強さが問われる。
柴崎はそこで、自身の価値や可能性を示してきた。さもなければ、2部とはいえオファーは来ない。
「ガク(柴崎)の技術センスは天才的」
メディアでもそう言われており、そのスキルは高い評価を受けている。
敵陣で前を向いてボールを受けられたときの柴崎は、スペインでも無双に近かった。コントロール&キックは抜群で、ビジョンも豊富。それは1部でも通用していた。賢い選手だけに、最善の選択で敵に最大の打撃を与えられる。ヘタフェ時代にFCバルセロナに浴びせたゴールは今も語り草になっている。
「監督にとっては、めちゃくちゃ"おいしい選手"だよ。格別な選手。サッカー選手として、オールマイティーな能力を持っているから」
デポルティーボ時代の指揮官だったフェルナンド・バスケス監督は名将の誉れ高いが、柴崎についてそう語っていた。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。