インテルがCL決勝に駆け上がった理由 守備的サッカーを成功させた2人の選手とは? (2ページ目)
【選手交代5人制の影響】
CL史のなかでこの手の守備的サッカーが最も興隆したのは、1990年代後半のイタリアのチームになる。それ以前のイタリアは、それとは真逆な、できるだけ高い位置でボールを奪い、相手の守備隊形が整う前に攻め切ろうとするプレッシングサッカーで、時代をリードしていた。
それがいわゆるカテナチオに一転した。ドイツや東欧諸国もこれに倣い、欧州でのシェア率は4割近くまで及んだ。ちょうど21世紀に入る頃、欧州サッカー界には、攻撃的サッカーと守備的サッカーが対立する構図が鮮明に描かれていた。1997-98シーズンのCL決勝、レアル・マドリード対ユベントスなどはそれを象徴した試合になる。
その結果は攻撃的サッカー陣営が勝利を収めるケースが多く、今日に至っているわけだ。しかし、ここに来て20数年前の状況に揺り戻しの動きが強まっていることも事実で、昨季のCLで準優勝したインテルは、その旗手という位置づけになる。
もっとも昨季のCLに出場したイタリア勢すべてが守備的陣営に属したわけではない。ユベントスは中庸で、ナポリ、ミランは完全に攻撃的陣営に属していた。ヨーロッパリーグで準優勝を飾ったジョゼ・モウリーニョ率いるローマは守備的だったので、イタリア内では対立軸がとりわけ鮮明に描かれた状態にある。
守備的サッカーが復権する理由を語る時、見逃せないのが選手交代5人制だ。3バックと5バックの関係はウイングバックの上下動に起因する。縦105メートルをひとりでカバーすれば、後半なかばには疲労が蓄積。足は止まる。専守防衛の状態に陥りやすい。だが、それは選手を代えることである程度、解決できる問題でもある。コロナ禍以前の数年前より、5バックになりにくい状態を維持しやすくなっているのだ。
昨季のCL決勝マンチェスター・シティ戦でも、オランダ代表の右ウイングバックのデンゼル・ダンフリースは後半30分に退いている。準決勝の2試合では逆にイタリア代表の左ウイングバック、フェデリコ・ディマルコが後半25分と21分に交代で退いている。
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