日本代表と戦うウルグアイ&コロンビアは「勝ち組」、アルゼンチンは「見世物」 混迷する世界の代表戦事情 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【モロッコを恐れるブラジル】

 それでもリオネル・メッシは19日にPSGでリーグ戦をプレーしたあと、プライベートジェットでブエノスアイレスに戻り、親善試合に参加する。おかげで試合のチケットはたった数分で完売。サイトには実に150万人がチケットを求めてアクセスしたという。また、試合の取材申請は世界中の13万人の記者からあったとも言われている。記者だけで2つのスタジアムがいっぱいになってしまう数だ。どんな騒ぎになるかわからないため、試合が行なわれるブエノスアイレスのエル・モヌメンタルは、キックオフの5時間前に開場する予定だ。

 一方、ブラジルはまるで違う。ほとんどの強豪国はこの期間に2試合をするというのに、ブラジルは1戦のみ。現在のブラジル代表はここ数十年で一番の危機的状態に陥っている。

 ブラジルはカタールW杯後にチッチ監督が辞任して以来、まだ監督が決まらない。ジョゼップ・グアルディオラ、ジョゼ・モウリーニョ、ジネディーヌ・ジダン、カルロ・アンチェロッティといった有名どころにことごとく断られていて、この試合のために現在暫定監督を務めるのは日本の東京ヴェルディでもプレーしたことのあるラモン・メネゼスだ。

 メネゼスは昨年からU‐20代表監督に就任し、結果を出している。今年1月から2月にかけて行なわれたU‐20の南米選手権で優勝を果たした。そのため今回の試合を戦うメンバーには、U‐20の若い選手も多い。それ自体は決して悪くないことだが、これまで一度も一緒にプレーしたことのない選手が多く、コンビネーションが心配だ。

 ネイマールはケガでいない。おまけに対戦相手はW杯で快進撃を見せたモロッコ。本当ならば対戦したくない相手だが、モロッコが大金を払ったことで実現した。選手たちは、無様に負けるのではないかと恐れている。もしそうなれば、ブラジル人の心はますますセレソンから離れるだろう。
 
 知恵を働かせて、選手の負担と、何より経費を抑えるチームも多くなっている。たとえばエクアドルは、2試合とも同じオーストラリア代表と、シドニーとメルボルンで戦うし、中国とニュージーランドも、オークランドとウェリントンで2試合を行なう。また、資金に余裕のないチームは、近場の国同士が戦う。タヒチ対ニューカレドニア、ラオス対ブータン......しかし、グアテマラ対ボリビアはその金も捻出できず、中止になってしまった。

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