堂安律「本当に最悪」だった体調不良 カタールW杯後、ドイツ戦ゴールのプレッシャーと戦っていた
昨年夏にフライブルクに加入した堂安律がここまで安定して活躍できているその背景には、クリスティアン・シュトライヒ監督との信頼関係がある。
加入前からシュトライヒ監督と綿密なコミュニケーションを取り、起用法や戦術を理解し、納得したうえでの選択だったことは本人が明かしたため、よく知られているエピソードだ。ここまでのところ、その信頼は強度を増している、と言えそうだ。
2試合連続ゴールで調子を上げてきた堂安律この記事に関連する写真を見る たとえば、これまで23試合に先発して2試合は後半ハーフタイムからと、今季ブンデスリーガ25試合すべてに出場している。堂安以外に全試合に絡んでいるのは、25試合フル出場しているGKマルク・フレッケンとドイツ代表DFマティアス・ギンターのふたりだけだ。
攻撃的MFというポジション柄、求められるのは数字だろう。堂安はここまで4得点5アシスト。ヴィンチェンツォ・グリフォが12得点4アシスト、ミヒャエル・グレゴリッチュが8得点5アシストに次ぐ、チーム3番手の存在だ。逆説的ではあるが、得点に絡むこと以外への貢献度、評価の高さがうかがえる。
ただやはり、本人としてはゴールやアシストを決めていない時期には焦りが募るようだ。
特にカタールW杯のドイツ戦でゴールしたことにより、周囲の期待度も格段に上がった。移籍専門サイト『トランスファーマルクト』による市場価値は、カタールW杯直前の1200万ユーロ(約16億円)から昨年末の時点で1500万ユーロ(約21億円)に跳ね上がった。
だが、後半戦初ゴールは3月12日のホッフェンハイム戦で、国内では9月3日のレバークーゼン戦以来。ELを含めても9月8日のカラバフ戦以来で、実に半年ぶりの得点だった。この間の葛藤についてホッフェンハイム戦後、堂安は『ビルト』紙にこう語っている。
「今日のゴールには、ものすごくホッとしています。あんまり人前で話したいことではないけれど、頭でも心でも、僕はゴールのことばかり考えてきました」
素直にそう語り出し、感じてきたプレッシャーについて触れる。
「ワールドカップ後、みんなに『お前はゴールを決めなくちゃいけない』と言われて、大きなプレッシャーを感じてきました。傍目には落ち着いているように見えたかもしれないけれど、内心はまったく違ったのです」
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著者プロフィール
了戒美子 (りょうかい・よしこ)
1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。