守田英正、冨安健洋が演じた見せ場の数々 ELでアーセナルは「格の違い」を見せつけることができず

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ヨーロッパリーグ(EL)決勝トーナメント1回戦初戦、スポルティング対アーセナル。ポルトガルリーグ(UEFAランク7位)の4位チーム対プレミアリーグ(同1位)の首位チームの一戦は、ブックメーカーによれば10番人気対1番人気(本命)の対戦でもあった。

 しかし、スコアは2-2。舞台がアウェーのジョゼ・アルバラーデであった点を差し引いても、プレミアの首位チームは格の違いを見せつけることができず、まさに好勝負を演じてしまった。

 アーセナルは前半22分、ファビオ・ビエイラのCKをフランス代表ウイリアン・サリバが頭で決め、幸先よく先制したにもかかわらず、終始ドタバタした展開を強いられることになった。

 接戦になった伏線を探る時、外せないのが開始5分、スポルティングCB、ゴンサロ・イナシオが最後尾から蹴った、正確な左足のロングキックだ。

 前線を走るポテ(ペドロ・ゴンサウベス)がアーセナルのアンカー、ジョルジーニョに走り勝ち、GKと1対1になったプレーだ。シュートは身体を開きすぎたため、右ポスト脇を抜けたが、優勝候補の本命を相手に劣勢が予想されたチームを勇気づけるには十分だった。

 そして守田英正である。ポテが惜しいシュートを放ったその直後、鋭い読みからアーセナル左ウイング、リース・ネルソンのトラップ際を狙いボール奪取に成功。その3分後にもウクライナ代表の左SB、オレクサンドル・ジンチェンコのドリブルをタイミングのいい守りで止めている。またその6分後には、左ウイングのフランシスコ・トリンコンにナイスパスを送るなど、守田が連続して好プレーを見せたことも接戦になった背景として見逃せない事象になる。

 試合は前半34分、スポルティングがイングランド人FWマーカス・エドワーズのCKからゴンサロ・イナシオが頭で決めて同点とする。さらにスポルティングは後半10分、右ウイング、エドワーズの中央に流し込むパスにポテが合わせ、GKがセーブした跳ね返りをCFパウリーニョが押し込み、逆転に成功した。その時、流れは完全にスポルティング側にあった。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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