守田英正、冨安健洋が演じた見せ場の数々 ELでアーセナルは「格の違い」を見せつけることができず (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【よくも悪くも守田が中心】

 だが、サッカーは好事魔多しだ。ドイツ人の主審トビアス・シュティーラーはその3分後、守田にイエローカードを出す。ファビオ・ビエイラの足をかっさらったことは確かだが、ボールを確実に捉えた後だったことも事実。守田にとってこれはEL通算3枚目のイエローとなり、アーセナルのホームで行なわれる次戦は累積警告で出場停止の身となった。

 振り返れば試合はこの時、のるか反るかの展開で、よくも悪くも守田を中心に回っていた。いいプレーは61分、トリンコンが落としたパスを前線へ走り込んだ守備的MFポテの鼻先に送り込んだダイレクトパスだ。ポテ経由でCFパウリーニョに渡ると、GKと瞬間、1対1の状況が出来上がった。この左シュートが決まっていれば3-1となり、番狂わせが起きる確率はグッと上がっていた。だが、パウリーニョの左足シュートはわずかに浮いてしまう。

 するとその折り返しの攻撃で事件は起きた。アーセナルがスイス代表のグラニト・ジャカが前線で構えるブラジル代表、ガブリエル・マルティネリに縦パスを送ったその直後だった。ボールは最終ラインの守備に参戦した守田の身体を直撃。コースを変えスポルティングゴールに吸い込まれていった。同点弾となるオウンゴールが決まったシーンである。守田にはツキがなかった。

スポルティング戦は後半18分からの出場となった冨安健洋(アーセナル)スポルティング戦は後半18分からの出場となった冨安健洋(アーセナル)この記事に関連する写真を見る そして冨安健洋がピッチに登場したのは、アーセナルが2-2とした直後だった。交代の相手はジンチェンコで、そのまま左サイドバック(SB)に収まった。

 守田と冨安。それぞれのチームでの立ち位置、出場時間には大きな違いがある。守備的MFとして中心的な役割を果たしている守田に対し、冨安はベンチを温めている時間のほうが長い。右SBの定位置争いではイングランド代表のベン・ホワイトに遅れを取っているのが現状だ。

 だが、冨安は多機能だ。左も苦もなくこなす。出場するや左の高い位置に進出。パス回しに絡んだだけではない。深々とした切り返しから縦突破を決め、丁寧なマイナスの折り返しをゴール前に送り込んだ。ファビオ・ビエイラのヘディングシュートはGKにフィスティングされたが、その傍らでマルティネッリは、ラストパスを送った冨安に称賛の拍手を送っていた。

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