メッシ、アルゼンチン代表続行の可能性も示唆。W杯後に母国で語った喜びの言葉の数々

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 リオネル・メッシのコメントをとるのは難しい。世界中のメディアがその言葉をほしがる一方、何より口数が少ない。何か言っても二言、三言だ。しかし、たまに口を開くからこそ、彼の言葉にはいつも真実がある。今回はそんなメッシの言葉を追いながら、彼のカタールW杯を振り返っていこう。

 私自身がこの大会中、メッシと言葉をかわせたのは3回だけだった。最初は初戦のサウジアラビア戦の試合後。メッシは記者たちには目もくれず、ミックスゾーンを突き進んでいったが、チームバスに乗る前に、どうにか彼を捕まえることができた。彼の言葉は短く、そして辛辣なものだった。

「みんなアルゼンチンの敗戦を喜んでいるんだろう。でも、そのなかでも僕たちは自分たちの道を見つけていく。人々はまだ本当のアルゼンチンの姿を知らない」

 そしてまるで予言者のようなこんな言葉を残した。

「今日泣く者は、明日笑うんだ」

ふだんは多くを語らないメッシだが、優勝後はさまざまな言葉を残している photo by JMPAふだんは多くを語らないメッシだが、優勝後はさまざまな言葉を残している photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る 実際、その後の物語はメッシが言ったとおりに展開していく。アルゼンチンはそれ以降、決して敗れなかった。メキシコ、ポーランドを次々と破り、首位で決勝トーナメントへ。次にメッシと話ができたのは、準々決勝のオランダ戦の試合後だ。

 メッシの表情はサウジアラビア戦の時とはまるで違っていた。数人のアルゼンチンの記者とともに彼を囲み、その日の試合について尋ねると、上気した顔でこう答えた。

「胃が痛くなるような、それでいて魂が震えるよう試合だった。たぶんここまでで一番難しい戦いだったと思う。まだ勝ったのが信じられない感じだ。オランダは僕たちに心理戦を仕掛けてきた。怒らせて冷静さを失わせようとした。でも、結局は強いほうが勝ったんだ」

 メッシはアルゼンチンのリーダーであり、導き手であり、守護者であり、スターでもある。しかし今大会ではそれにひとつ、新たな顔が加わった。率先して闘志をみなぎらせる闘将としてのメッシである。

 最後に私がメッシの言葉を聞けたのは、彼が世界王者となったばかりの時だった。メッシは記者会見を欠席し、アルゼンチンの選手はミックスゾーンでも立ち止まらず、歌い踊って通り過ぎていった。

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