優勝候補筆頭に躍り出たアルゼンチン。メッシは健在ぶりアピールも活躍頻度は減っている (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

【アルゼンチンにも物足りなさ】

 2-2。試合は土壇場で振り出しに戻った。ブラジル対クロアチア戦を彷彿させるような展開に酔いしれることになった。ブラジル対クロアチアは追いついたクロアチアがその勢いで、PK戦を制した。このオランダ対アルゼンチン戦は、そこから30分間、延長戦を戦った。PK戦の末に敗れたオランダは、結果論を承知で言えば、この延長戦の戦いで勢いに乗れなかったことに敗因がある。

 視角鋭いルサイル競技場の記者席から、アルゼンチンとオランダの選手を俯瞰で比較すると、アルゼンチン選手の小ささが目立った。オランダが1点差としたゴールのように、クロスボールをサイドから送り込めば、チャンスは到来しそうに見えた。

 前線には先述の長身FWベグホルストに加え、ヘディングに定評があるルーク・デ・ヨングも配していた。ところがオランダは、いわゆるパワープレーに出なかった。妙につなごうとした。大型選手のわりに足もとがうまいというオランダ人の特性に溺れたという感じもしたが、監督の指示が徹底されていないようにも見えた。

 5バック同然の守備的な3バック=3-4-1-2でスタートしながら、追いかける展開になるとあっさり放棄。その後、4-2-3-1から4-4-2に布陣を移行しながら戦ったわけだが、このブレが終盤、攻撃的サッカーを徹底できなかった理由だ。

 アルゼンチンもPK戦で、勝つには勝ったが、勝因を挙げにくい、物足りないサッカーに終始した。全体的に小粒の感は否めない。メッシが活躍する頻度も減っている。しかしブックメーカー各社は、準決勝の相手がクロアチアだからだろうか、準々決勝の2試合が終わった段階で、アルゼンチンを1番人気に推している。フランス、イングランド、ポルトガルとの力関係を、準々決勝の残る2試合で精査してみたい。

 ちなみに試合後に判明したことだが、スタンドを埋めたアルゼンチンサポーターとおぼしき集団は、その多くが地元カタールの人で占められていたようだ。メッシ人気は現地では相変わらず高い。追い風となるのか。こちらも気にしてみたい。

【著者プロフィール】杉山茂樹(すぎやま・しげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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