優勝候補ブラジル敗退の必然。負けた理由はいくらでも挙げられる

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

 12月9日、エデュケーション・シティ・スタジアム。ブラジルはクロアチアのゴールに迫りながらも、GKの好守に阻まれていた。0-0のまま迎えた延長前半、終了間際だった。

 ブラジルの10番を背負ったネイマールは、堅牢に守りを固めたクロアチアに対し、閃光の輝きを見せる。中盤に下がってボールを受けると、そこから縦へパスを入れ、ワンツーからひとつ前に出ると、さらにもう1本縦パスを流し込み、再びワンツーから抜け出す。出てきたGKもかわし、右足でゴールのニア上へ蹴り込んだ。

 ネイマールは一瞬でゴールを決め、周りには歓喜の輪ができた。ブラジル代表77得点目。"王様"ペレに並ぶ、祝福すべきゴールだった。

 ところが、その喜びは絶望へのプロローグだったのである。

PK戦の末にクロアチアに敗れ、憔悴した表情のネイマール(ブラジル)PK戦の末にクロアチアに敗れ、憔悴した表情のネイマール(ブラジル)この記事に関連する写真を見る「ブラジルは堅守カウンター型のチーム」

 稀代の戦術家でオランダ代表を率いるルイス・ファン・ハール監督は、はっきりとそう語っている。

 つまり、ブラジルは能動的なチームではない。老練な選手を揃えた堅牢な守備が特徴。自分たちがボールを握って攻めるプレー構造は弱く、攻撃は選手個人の感覚に任されている。

 たとえばグループリーグのスイス戦、ネイマール不在のチームはほとんど輝きを放てなかった。チームとしての形がないに等しく、個人が打開するしかない。当然、スイスの組織的な守備の餌食になって、攻められるシーンもあった。しかし、苦しみながらも守りきるだけのディフェンスがあり、チアゴ・シウバやマルキーニョスが組織を作っていた。そしてカゼミーロの一発でノックアウトした。

 ネイマールが戦列に戻って、韓国戦では大量得点で勝利したが、本質は変わっていない。攻撃は「個」の力量次第。前にボールを入れ、それを奪い返して前に出るときは「怖さ」がみなぎるが、インスピレーション任せで再現性が低い。

 クロアチア戦もそれは同じだった。トップ下のネイマールが中盤まで下がらざるを得ない。自らがゲームを作って、波状攻撃から決定的シュートを放ち、ラインを鮮やかに破るパスも送った。そして延長に入って、冒頭に記したように独壇場でゴールまで決めた。

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