優勝候補ブラジル敗退の必然。負けた理由はいくらでも挙げられる (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

【モドリッチ「我々は期待されてなかった」】

 しかし、チームとしては守りの比重が高かった。たしかにバックラインは強固だし、中盤のフィルターも効いていた。しかし、ボールをどう運んでいくのか、で四苦八苦。かつてのマウロ・シルバのようにテンポを作れる選手がいないのだ。結局はネイマール頼み。コンビネーションが生まれないだけに、ラフィーニャ、ヴィニシウス・ジュニオールもやがてパワーダウンした。

 それでもネイマールの孤軍奮闘で1-0にしたのだが、これでブラジルは勝利を確信してしまった。

「我々はグループリーグのときから期待されていなかった。日本にも勝てないと思われていた。しかし、我々はいつだって、自分たちは強いチームだと信じていた。だからこそ、準決勝に勝ち進むことができたんだ」

 クロアチアのエース、ルカ・モドリッチの言葉である。その不屈さは瞠目に値した。116分、ブラジルのお株を奪うカウンターで、クロスから同点にしたのだ。

 そしてPK戦、ブラジルはクロアチアの信念に屈するように敗れ去っている。ネイマールのゴールがもたらした歓喜が大きかっただけに、悲しみや落胆も大きい。天国から地獄だ。

 ブラジルはたしかに優勢ではあった。シュートは倍近く放っているし、枠内シュートに限ったら11本対1本。勝つべき試合だった。

 しかし、ボールポゼッションでも、デュエルでも、粘り強く戦った相手に負けている。交代策はどれも不発で、負けた理由はいくらでも挙げられる。なぜ延長に入って、屈強な守備をしていたエデル・ミリトンを下げたのか。そのサイドを呆気なくやられることになった。

 敗退はサプライズではない。

 決勝トーナメント1回戦、ブラジルは韓国を4-1で撃破したが、思いもよらぬ論争に巻き込まれている。ゴールのたびにサンバを踊り、はてはそこにチッチ監督までも参加。お祭り騒ぎだったが、その行為は「非紳士的」と厳しい批判を受けた。

 ブラジル人にとって、サンバはひとつの喜び表現なのだろうが、点差がついたなかでのダンスは、欧州では「侮辱行為」とされる。

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