優勝候補筆頭に躍り出たアルゼンチン。メッシは健在ぶりアピールも活躍頻度は減っている

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 ブラジルがクロアチアに延長PK負けしたその1時間後に行なわれたオランダ対アルゼンチン戦。8万8235人を飲み込んだルサイル・スタジアムに、オレンジ色を身のまとうオランダサポーターの姿は、せいぜい200~300人程度しか確認できなかった。

 圧倒的に幅を利かせていたのはアルゼンチンサポーターで、最大のライバル、ブラジルが敗れ去ったことに満足しきりという様子だった。アルゼンチンは大会前、2番人気だったので、ブラジルがPK負けした瞬間、大会の主役に踊り出る格好となった。

 オランダサポーターはなぜ少なかったのか。オランダ人と言えば、欧州ではドイツと並ぶアウェーの観戦好きで知られる。数はもちろん、応援の派手さでも負けることはなかった。筆者がオランダ人なら、ルイス・ファン・ハール監督のサッカーが面白くないことを理由に挙げずにはいられない。オランダといえば面白いサッカーをする国として定評があった。イタリア戦、ドイツ戦に外れはあってもオランダ戦に"ハズレ"はない。その攻撃的サッカーは、第三者にとって魅力的な、歓迎すべきものに映った。

 それが今回(ユーロ2020もそうだったが)、ガラリと一変した。会見で、その点についてある記者から指摘されると、ファン・ハールは「キミはサッカーがわかっていない」とやり返したそうだが、かつてファン・ハールから、攻撃的サッカーについて詳しくレクチャーを受けた筆者としては、ファン・ハールの変質を簡単に受け入れることはできない。

 攻撃的な気質であるにもかかわらず、3バックの中でも最も5バックになりやすい3-4-1-2を採用する理由はなぜか。このアルゼンチン戦で言うならば、0-1とリードされて迎えた後半19分、布陣を4―2-3-1に代えた理由はなぜか。

 前半、ペースに乗れなかった理由は、攻撃的な気質とマッチしない守備的サッカーに原因はある。守備的サッカーの代名詞であり、パスコースの少ないクリスマスツリー型の陣形を敷きながら、ボールをつなごうとする。カウンターではなく、パスワークを売りにする。この非合理的なちぐはぐさが、勝てそうに見えた試合を落とした1番の理由だ。

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