メッシ、ベンゼマらが持つ「知覚」とは? 一流アスリートの高齢化が進んだ理由 (2ページ目)
メッシのつくる穴をカバーするアクラフ・ハキミ
選手たちはフィジカル、メンタル、生化学の各分野で、1~10点の間で評価を受ける。総合点で4.7点以下の選手は、ケガをする可能性がある。
このシステムはしっかり機能した。「非外傷性のケガが激減した。過去5年と比べて、90%を優に超える減り方だ」と、ミースマンは言う。
34歳になった今年、バロンドールに選ばれたカリム・ベンゼマ(レアル・マドリード)photo by Nakashima Daisukeこの記事に関連する写真を見る しかしミースマンが話してくれたなかには、中年フットボール選手の隆盛の理由をもっと的確に説明していることがありそうだ。彼は当時、ミランにいたブラジル人ストライカーのロナウドをほめ称えたのだ。すばらしい選手で、自分のケアにあくせくすることもないが、負傷が少なく、人生を楽しんでいるという評価だ。
「ロナウドはすばらしい」と、ミースマンは言った。「状況の理解も、反応も速い」。彼には試合がスローモーションのように見えているようだった。
ミラン・ラボは「知覚」(つまり「脳内にある詳細を解釈する」能力)がフットボールでは最も重要ではないかと考えている。平凡な選手でもスター選手でも、この力は年齢を経るにつれて高まっていく。知覚の改善は、パスの精度が年齢を1歳重ねるごとに0.25%ずつ上がる要因になっている。
しかし知覚の向上だけでは、選手寿命が延び続けている理由としては十分ではない。知覚が高まっても他の能力は低下するからだ。頭も脚も歳をとる。
中年までプレーできるのは、本当に偉大なフットボール選手だけだ。プレッシングが厳しくなったためにプレーのスペースが狭い今のフットボールでは、ほんの小さな穴を見つけられるカリム・ベンゼマやリオネル・メッシのような選手の知覚はあまりに貴重だ。そこで、彼らが失った能力をもっと若い選手たちが補っている。
たとえばパリ・サンジェルマンでは、モロッコの右サイドバック、アクラフ・ハキミ(24)がメッシの脚となり、彼がつくる穴をカバーする。こうしてメッシは、彼にしかできないプレーに集中できる。
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