アルゼンチンはメッシを経由しなくてもゴールできる。相手の堅守を崩した見事なポジショナルプレー (2ページ目)

  • 篠 幸彦●文 text by Shino Yukihiko
  • 西村知己●イラスト illustration by Nishimura Tomoki

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モリーナが中間ポジションで縦パスを受け、右サイドを崩してクロス

 ポーランドがDF4人、MF4人でタイトに守るラインを、アルゼンチンが鮮やかに破ってゴールへつなげたシーンである。

モリーナが中盤背後の中間スペースで縦パスを受け、右サイドでの展開からゴールが生まれたモリーナが中盤背後の中間スペースで縦パスを受け、右サイドでの展開からゴールが生まれたこの記事に関連する写真を見る まずポイントになるのがロドリゴ・デ・パウルのポジション。低い位置に落ちることで、右サイドバック(SB)のナウエル・モリーナを高い位置に押し上げ、ポーランドのヤクブ・カミンスキに対して数的優位を作れている。

 この時、リオネル・メッシが中盤に落ちて、ポーランドのクリスティアン・ビエリクがピン留めされ、左SBバルトシュ・ベレシンスキはアンヘル・ディ・マリアを見ているため動けなかった。

 カミンスキはこの背後の状況が見えていない。それでもモリーナへのパスコースを切りながらデ・パウルへボールが出た瞬間にいつでも前へ出られる立ち位置を取っていた。

 次の瞬間、ビエリクがカバーに入れないと見るとモリーナがカミンスキの背後の中間ポジションに入り、ロメロからの縦パスを呼び込んであっさりとラインブレイクに成功。

 モリーナはライン際のディ・マリアへボールを渡すとそのままオーバーラップ。右サイド深くに進入すると、最後は中央でアルバレスが守備ラインを深く押し込み、手前のスペースに走り込んだマック・アリスターにクロスを入れて先制点となった。

 タイトな守備を前にしても、立ち位置により優位を作ったアルゼンチンのビルドアップが見事なシーンだった。

 初戦はつまずいたものの本来の強さを取り戻したアルゼンチンが、決勝トーナメントのラウンド16オーストラリア戦でどんなパフォーマンスを見せるか注目である。

【筆者プロフィール】
篠幸彦(しの・ゆきひこ)
1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の”実戦ドリル”でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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