三笘薫に期待されているのは決定力。英国人記者が分析するブライトンでの定位置争いと爆発の可能性

  • リチャード・ジョリー●文 text by Richard Jolly
  • 井川洋一●翻訳 translation by Igawa Yoichi

チームは5シーズン前にプレミア初昇格

 プレミアリーグに初挑戦する三笘薫にとって、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンは最適なクラブのひとつと言えるだろう。昨夏に彼らはこの日本代表ドリブラーを引き抜いたが、初年度はユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)へ期限付きで放出。今夏、満を辞して英国南岸のビーチリゾートに三笘を迎えたクラブは今、その歴史上における最盛期を謳歌している。

三笘薫はプレミアリーグ・ブライトンで活躍できるか photo by Getty Images三笘薫はプレミアリーグ・ブライトンで活躍できるか photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 風光明媚な海岸線を持つブライトンは、英国でもっとも魅力的な街のひとつだ。1979年に公開された英国映画『さらば青春の光』の舞台になったり、2002年にはDJファットボーイ・スリムが20万人以上もの観衆を集めたビーチパーティーを開催したりと、音楽や文化の発信地の顔も持つ。しかしフットボールの文脈では、長きに渡って僻地と言えた。

 1901年に創設されたブライトンが初めてイングランド1部リーグに到達したのは、1979年のこと。だがその4シーズン後に降格すると、以降は長きに渡って下部リーグを彷徨っていた。

 そんなクラブの命運を決定的に変えたのが、現会長のトニー・ブルームだ。地元出身で生粋のサポーターだったブルームは、ポーカーやスポーツ賭博で財を成し、2009年に当時3部リーグを戦っていた愛するクラブの筆頭株主となった。

 慧眼を持つブルーム会長は監督の人事にも手腕を発揮し、最初に招聘したグスタボ・ポジェのもと、チームは2011年に2部に昇格。さらに2014年に就任したクリス・ヒュートン監督が、2017年にクラブ史上初のプレミアリーグ昇格に導いた。

 より高みを目指す会長は、2019年5月に守備的な手法を得意としたヒュートン監督に見切りをつけ、現監督のグレアム・ポッターを招いた。

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