リバプールvsレアル・マドリード。CL決勝の戦力を識者3人が徹底比較。「監督対決も楽しみ」 (4ページ目)
経験値抜群の両監督
倉敷 続いて、両監督について話しましょう。ユルゲン・クロップとカルロ・アンチェロッティはそれぞれ異なるタイプの指導者ですが、この対戦ではどちらの監督の優位性を考えますか?
中山 難しい比較ですね。アンチェロッティのほうが監督キャリアは長いので、経験値という点ではクロップを上回っていると思います。ただ、クロップはドルトムント(ドイツ)時代に1度、リバプールでも過去に2度CL決勝戦を戦っていて、優勝も1度しています。今回は4度目のCL決勝戦になりますが、アンチェロッティよりも8つも歳下であるにもかかわらず、CLでこれだけの実績があるという点では、実際はそれほど経験の差はないのかもしれません。
しかしながら、アンチェロッティほど酸いも甘いも知り尽くしている監督も少ない。たとえば、今季のラ・リーガ優勝を決めたエスパニョール戦から、大事なマンチェスター・シティとのCL準決勝第2戦まで中3日しかなかったのに、選手に思いきりリーグ優勝のお祝いをさせてあげました。最初にそれを見た時は、大一番の前に選手たちの気を緩めさせるようなことをして大丈夫なのか、と心配になりましたが、結果的にシティとの試合では劇的な逆転勝ちを収めました。ああいったことは、経験がないとなかなかできない。
その後、消化試合になったリーグ戦では徹底的に選手のプレータイムを管理し、決勝戦から逆算しながらローテーションを組み、CL決勝戦前の最終節にレギュラーメンバーをスタメン起用するあたりは、さすがですよね。しかも、これでCL優勝を成し遂げたら、アンチェロッティは監督としてのCL優勝回数が4回になって、単独トップで過去最多を更新することになります。"旬"という部分ではクロップに傾くところもありますが、ここはリスペクトを含めて、アンチェロッティに軍配を上げたいと思います。
小澤 僕も、甲乙つけがたいというのが正直なところです。両監督の持ち味がまったく違いますし、近年で言うと、クロップのほうがチーム作りやサッカーの内容に対する評価が高いと思いますしね。もちろん、今季のアンチェロッティ監督はヨーロッパの5大リーグすべてを制覇した史上初の監督になったわけですが、レアル・マドリードに来る前はエバートン(イングランド)、その前はナポリ(イタリア)と、CL制覇を狙えるようなビッグクラブを率いていたわけではないので、近年の実績ではクロップが上回っていると見ています。
とはいえ、今シーズンに見せたアンチェロッティのマネジメントはさすがだと感じていますので、ここは引き分けが妥当ですね。逆に、それだけ優れた監督同士が対戦する今回の決勝戦は、ベンチワークを見ても十分に楽しめるはずです。個人的には、年齢もキャリアも経験も違う2人だからこその対決を、楽しみにしたいと思います。
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