リバプールvsレアル・マドリード。CL決勝の戦力を識者3人が徹底比較。「監督対決も楽しみ」 (5ページ目)
個人を楽しむか、チームを見るか
倉敷 今回の決勝戦はいろいろな視点で楽しむことができそうですが、お二人はどこに一番注目して決勝戦をご覧になるのか、最後に教えて下さい。
中山 やはり世界のトップクラスの選手を揃えたチーム同士の戦いなので、敢えて選手個人のプレーに注目してみたいですね。どの選手も一流のテクニックを見せてくれると思いますが、そのなかで僕は最も注目したいのは、レアル・マドリードのベンゼマです。
相手ボックス内におけるシュート前の動き、相手DFとの駆け引きは、準決勝までのプレーだけを見ても、なぜベンゼマがこれだけゴールを決められるのかがよくわかると思います。味方がボールを持っても動きすぎず、フラフラ歩きながら、相手の動きを見て一瞬で背後をとる。味方も、その動きを先読みしてボールを供給するので、ベンゼマの動きとパスが見事に一致するわけです。あれは、絶妙としか言いようがありません。
それと、試合のなかで何度か見せてくれる単独プレッシングも注目ですね。とくに味方と連動しているわけではないのに、相手GK、あるいはCBに対してベンゼマが単独でプレスに行くと、相手が焦ってミスするシーンが意外と多い。あのプレスにいくコースどり、スピードアップの仕方、足を出す方向やタイミングなどは、ベンゼマにしかできないテクニックだと思います。決勝のような大一番では、ミスをしたチームが負けてしまうことが多いので、そういう点でも、ベンゼマのひとりプレッシングは要注目です。
リバプールでは、ファン・ダイクのロングパスに注目したいですね。先ほどもふれましたが、あのロングパスの精度は驚異的ですし、苦しい場面でもあの1本のパスで試合の流れを変えたり、ゴールにつなげたりするので。ファン・ダイクを見る時は、守備のみならず、キックにも注目してほしいと思います。
小澤 僕は、チーム対チームという視点で楽しみたいですね。おそらく戦術的なトレンドで言っても、近年はプレミア勢が先頭を走っていると思います。
また、戦力的に充実しているうえ、インテンシティが高くて、常に90分間アグレッシブなサッカーができるくらい、フィットネスの調整の仕方、コンディショニングが整っているので、それほど大胆なローテーションを組まなくても、シーズン通してすばらしいサッカーをやりきれてしまう。その完成系が、現在のリバプールだと思っていて、そういう点では、どちらが有利かと言えば、やはりシーズン通したアベレージ的にリバプールでしょう。
ただ、今シーズンのレアル・マドリードのラ・リーガやCLでの戦いぶりを見ていると、それほどアグレッシブではないし、ローテンポなのですが、逆にそのサッカーが論理的ではなく、言語化できないものであっても、しっかり守ってゴールを奪うことができれば勝てる、というスタイルでここまで勝ってきた。
そういう意味では、戦術のトレンドに影響を与える可能性もありますし、それがレアル・マドリードの台頭の原動力なのだと思っています。理不尽で、説明がつかないようなことを起こせるレアル・マドリードは、とても興味深いと思いますし、そんなチームを、戦術的トレンドの視点から楽しみたいですね。
倉敷 両チームとも、ここまではアンフィールド、サンティアゴ・ベルナベウという魔法を使えるスタジアムで戦えましたが、決勝戦はフランスのパリ郊外にあるサン・ドニのスタッド・ドゥ・フランスで行なわれます。レフェリーは昨シーズンのヨーロッパリーグ決勝戦を担当したご当地フランスのクレマン・トゥルパンです。
果たして、フランスのスタジアムで愛されるのはどちらのチームか? CLファイナルはいつも面白いのですが、とくに今回は歴史的に見ても、勝ち上がりを見ても、小澤さんがおっしゃった、人が創り出す不思議な魔法のような文化という視点から見ても興味深い。いろいろな要素が詰まった一戦です。
どうぞお見逃しのないように。好ゲーム必至の一戦をたくさんの人に見ていただき、それから熱く語りあってほしいと思っています。
倉敷保雄さん、小澤一郎さん、中山淳さんが参加!
「noteサッカー勉強会~欧州サッカーの現状と日本のこれからの立ち位置~」
・5月27日(金)20時から開催。
・YouTubeでオンライン視聴が可能です。アーカイブも残ります。
◆リバプールとレアル・マドリードのフォーメーション
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