久保建英には何が足りないのか。レアル・マドリードには完敗、レンタルバックへ求められること (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

豊富な才能だけでは足りない

「Tirar del carro」

 スペイン語で「一番つらい仕事を引き受ける、先頭に立ってやる」という意味だ。それがレアル・マドリードのようなチームで求められる資質だろう。チャンピオンチームでプレーするには、「いい選手」では足りないのだ。

「『才能はあるか?』と聞かれたら、『間違いなくある』と答えるだろうね」

 2年半ほど前、レアル・マドリードで栄光を勝ち取った元世界王者シャビ・アロンソに、久保について訊ねたことがあった。

「ただ、戦える選手かどうかは、これからピッチに立つ久保自身が証明するしかない。チームを勝たせる貢献ができるか。そこがカギになる。でも、"違いを出せる選手"ではあるだろう。焦らず、じっくりと少しずつ前に進むべきだね。彼が持っている才能をピッチで出せるようになったら、自ずと結果は出るはずだ」

 才能が豊富なだけではなく、卓越した勝利者でなければならない。

 チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦で、パリ・サンジェルマン(PSG)を死闘の末に撃破したばかりのレアル・マドリードは、マジョルカ戦ではややペースダウンしていた。しかし、要所では選手の格が違った。とりわけ、ヴィニシウス・ジュニオール、カリム・ベンゼマの2人は、こともなげに試合を決めた。一瞬で見せた技術やコンビネーションが、勝利につながったのだ。

 来シーズン、レアル・マドリードが新たに補強する選手としては、キリアン・エムバペ(PSG)の移籍が確実視されている。エムバペは世界王者フランス代表の中心であり、チームを勝たせる試合をトップレベルで続けてきた。別次元のアタッカーと言える。

 レアル・マドリードに加入するということは、それこそベンゼマ、ヴィニシウス、そしてエムバペに匹敵するチャンピオンプレーヤーでなければならないということだ。「ヴィニシウスのスペイン国籍取得でEU外選手枠がひとつ空く」とも言われる。だが、そんな了見で加われるチームではないのだ。

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