バイエルンを欧州の頂点に導いた新名将フリック。新機軸戦法の正体 (2ページ目)
リバプールとの違いは、ビルドアップを重視しているところ。後方からのビルドアップをしっかり行なうが、アンカーのチアゴ・アルカンタラが重要な役割を果たしている。同時に右サイドバック(SB)のヨシュア・キミッヒ、センターバックのダビド・アラバもパスワークの能力が高く、プレッシャーを受けても自陣でボールを失うのは稀だ。
ボールを確保したあとは、必ずサイドから攻める。違う言い方をすると、サイドからしか攻めない。中央エリアにいるMFトーマス・ミュラー、レオン・ゴレツカはこのエリアではほとんどボールに触らない。
プレーする時もほとんどワンタッチで捌くだけ。中央でボールを失ってカウンター食らうリスクを最小化しているのだ。ここまで用心深く攻めるチームは珍しい。
スペインのエイバルなど、小さなクラブではよく使われる戦法ではあるが、バイエルンのようなビッグクラブではあまり例がなかった。
ただ、今季のヨーロッパリーグ(EL)で優勝したセビージャも、バイエルン同様に攻撃でまったく中央エリアを使わなかった。CL、EL優勝チームに共通する戦法だっただけに、ビッグクラブにも一気に広まっていくかもしれない。
後方でボールを確保しながら、サイドへ長いパスを送る。ウイングのセルジュ・ニャブリ、イバン・ペリシッチ、キングスレイ・コマンはいずれもスピードが抜群で突破力がある。彼らが単独で突破できなければ、SBがすかさずサポート。中央にはクロスボールに強いFWロベルト・レバンドフスキ、ミュラー、ゴレツカが待っている。
レバンドフスキ、ミュラーは、ハイクロスをゴールに変えるスペシャリストだ。ゴレツカも強い。この3人は中央エリアの選手だが、中盤の中央で相手を背にした状態でパスを受けても何かができるタイプではない。
中央エリアにいるのはパスを受けるためではなく、ゴール前でクロスに詰めるため、守備では高い位置からプレッシャーをかけるためだ。彼らにとって中央エリアは、ペナルティーエリアへ入る前の控室のようなものなのだろう。
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