マンUを買収した「ビリオネア」がサッカー界にもたらした功罪 (5ページ目)
しかし、多くのサポーターの見方は違う。買収から10年後の2015年、『マンチェスター・ユナイテッド・サポーターズ・トラスト』と称するファン団体は、次のようなリリースを発表し、クラブがグレイザー家にどれだけ搾取されたのかを世間に知らせた。
「私財を一銭も投ずることのない買収は、ほとんどのクラブでは『所有権の犯罪』と考えられる。しかも彼ら(グレイザー家)はそれだけでは飽き足らず、マンチェスター・ユナイテッドから多額のカネを貪っているのだ。
レバレッジド・バイアウトによる借金の返済にとどまらず、株主である自らへの報酬や、いまだにクラブが抱える借金を考慮すれば、その額はゆうに10億ポンドを超える。その額は今も増え続けている。古今東西のフットボール史において、これほどまでにクラブからカネをむしり取ったオーナーはいない」
■著者プロフィール■
ジェームス・モンターギュ
1979年生まれ。フットボール、政治、文化について精力的に取材と執筆を続けるイギリス人ジャーナリスト。米『ニューヨーク・タイムズ』紙、英『ワールドサッカー』誌、米『ブリーチャー・リポート』などに寄稿する。2015年に上梓した2冊目の著作『Thirty One Nil: On the Road With Football's Outsiders』は、同年のクロス・ブリティッシュ・スポーツブックイヤーで最優秀フットボールブック賞に選ばれた。そして2017年8月に『The Billionaires Club: The Unstoppable Rise of Football's Super-Rich Owners』を出版。日本語版(『億万長者サッカークラブ サッカー界を支配する狂気のマネーゲーム』田邊雅之訳 カンゼン)は今年4月にリリースされた。
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