マンUを買収した「ビリオネア」が
サッカー界にもたらした功罪 (4ページ目)
それまでの75年間、一度も負債を抱えたことがなかったクラブは莫大な赤字を計上するようになった。それでもグレイザー家とユナイテッドは、クラブの継続的な成功と商業的価値の最大限の利用、テレビ放映権の高騰などにより、借金を返済し続けた(返済額が年間6000万ポンドに上る年も)。グレイザー家が実権を握り始めてから、ファーガソン率いるユナイテッドは、5度のプレミアリーグ、3度のリーグカップ、クラブワールドカップ、チャンピオンズリーグを制している。
2016年には、イングランドのクラブとして初めて年間5億ポンド(当時のレートで約724億円)の収益を記録し、利益は過去最高の6800万ポンド(約98億5000万円)に達した。イギリスの『デイリー・テレグラフ』紙の記事(2017年9月)によれば、8億ポンド近くあったクラブの負債は2億1310万ポンド(約309億5000万円)まで減少。グレイザー家はビジネスの手腕をいかんなく発揮し、公式ワインパートナー、公式タイヤパートナー、公式塗料パートナーなど、これまでになかった大型スポンサーを獲得して、収益を倍増させたのである。
家長のマルコムは2014年に他界したが、2人の息子、ジョエルとアブラムが後を引き継ぎ、そのほか4人の兄弟がディレクターに収まっている。"赤い悪魔"の頂点には、グレイザー家の王朝があるのだ。
彼らが成したことをどう評価すればいいのか。ビジネス面に関しては、その功績は大きい。彼らの買収とそれに続くクラブの価値の飛躍的な上昇、商業価値を最大限に生かした運営は、経営面にとてつもない恩恵をもたらしたといえる。
『フォーブス』誌によると、現在のユナイテッドの資産価値は36億8900万ドルで、レアル・マドリードを抜いて世界一になった。チームはファーガソン退任後に苦しんだが、現監督のジョゼ・モウリーニョを招聘してからはチャンピオンズリーグの出場権を獲得し続けている。
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