2003年、アブラモビッチが
チェルシーを買収した本当の理由 (6ページ目)
アブラモビッチがチェルシーを買った理由は不透明だ。彼はあまり表に出ようとしないし、ベールに包まれている部分は大きい。ただ、ここにひとつの事実がある。"エリツィン・サークル"の多くが財産を奪われ、国外に逃亡せざるをえず、なかには奇妙な最期を迎えた者もいる。ロシアの新興財閥たち、オリガルヒはほぼ制圧されたと言われる一方で、アブラモビッチは資産を保持したままだ。
もしかしたら、チェルシーを買ったことが何かの説明になりはしまいか。世界中に知られるフットボールクラブのオーナーとなれば、国際的な知名度を得ることになる。それほど注目される人物には、手出しはしにくい。つまり、自身と資産を守るための"高額な保険"だったのではないか。
いずれにせよ、アブラモビッチがチェルシーを世界的なスーパークラブに変貌させたことは事実だ。そしてまた、フットボールのオーナーシップのあり方も決定的に変えた。以降、彼を追うように、世界中のビリオネアたちが欧州のトップクラブの経営権を手中に収めていく──。
■著者プロフィール■
ジェームス・モンターギュ
1979年生まれ。フットボール、政治、文化について精力的に取材と執筆を続けるイギリス人ジャーナリスト。米『ニューヨーク・タイムズ』紙、英『ワールドサッカー』誌、米『ブリーチャー・リポート』などに寄稿する。2015年に上梓した2冊目の著作『Thirty One Nil: On the Road With Football's Outsiders』は、同年のクロス・ブリティッシュ・スポーツブックイヤーで最優秀フットボールブック賞に選ばれた。そして2017年8月に『The Billionaires Club: The Unstoppable Rise of Football's Super-Rich Owners』を出版。日本語版(『億万長者サッカークラブ サッカー界を支配する狂気のマネーゲーム』田邊雅之訳 カンゼン)は今年4月にリリースされた。
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