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また決勝で涙も、不屈の「スーパーマリオ」
マンジュキッチの闘志は衰えず (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 高須力●写真 photo by Takasu Tsutomu

 破るべき不名誉な記録だったが、今回も運命は微笑んでいない。あの1点は、焼け石に水だったのか?

「少年時代の憧れは(元ブラジル代表FW)ロナウドだった」

 マンジュキッチはそう明かしている。その幼少期は、ルカ・モドリッチ、イヴァン・ラキティッチら同年代のクロアチア代表選手と同じように、辛酸を極めた。旧ユーゴスラビア紛争に巻き込まれ、一時は一家揃ってドイツに避難。12歳のときに戦争が集結し、ようやく故郷に戻ることができた。

 そんななかで、父親が地域リーグながらプロサッカー選手として活躍するGKだったことは、マンジュキッチにとっては大きな後押しになったかもしれない。身体的に恵まれているのは、やはり父の遺伝だろうか。名前をもじって「スーパーマリオ」と呼ばれる身体能力の高さは大きな武器になった。ユース年代では、まさにロナウドのように圧倒的な走力とパワーで得点を量産している。

 ただ、若い頃は精神面が不安定で、自分を制御できないところがあったという。2009年、NKディナモ・ザグレブ時代には、規律違反を犯し(不用意な警告カードをもらった)、10万ユーロ(約1300万円)もの罰金を受けている。闘志が空回りすることがあった。

 しかし、その気の強さがなかったら、彼は凡庸な選手で終わっていたかもしれない。

「僕はときどき、感情のままに行動してしまうことがある」

 マンジュキッチはそう自己分析をしている。

「無意識に、アドレナリンが出てしまう。自分のなかで、コントロールしなければいけないという気持ちはいつも持っている。でも、その攻撃性こそが自分の長所であるとも思っているんだ。そのおかげで、90分間、戦い続けられるからね」

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