データが示す「史上最強のメッシ」がアルゼンチン代表で輝けない理由 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 メッシが代表で輝けない要因について、アルゼンチン人は10年近く議論してきた。一部には、故郷のロサリオを13歳で離れてバルセロナに渡ったメッシには、国を思う気持ちが足りないのではないかという声もある。

 メッシは10代のときに、スペイン代表でプレーしないかという誘いを何度も断っている。今もロサリオのなまりが残っているし、アルゼンチンのピザやスイート・プディングが大好きだ。それでもメッシは、いまだに「アルゼンチン人としては何かが足りない」と思われている。

 輝けないのは、国の大きな期待が足かせになっているからだという見方もある。例えば2016年のコパ・アメリカ決勝で、メッシはPKを外している。

 メッシは何かにつけてディエゴ・マラドーナと比較される。マラドーナは1986年のワールドカップをほぼひとりで勝ち取った。しかもマラドーナは、試合前に国歌を大声で歌ったものだ。内気なメッシには絶対にできない。

 メッシは彼を批判する人たちに、こう反論した。「『おまえはアルゼンチン人じゃない』と言われるほど腹の立つことはない。僕の気持ちをどう思っているんだ?」

 プレッシャーに負けているという説明は、当たっていないようだ。チャンピオンズリーグを3度制覇し、スペインで9つのリーグタイトルを手にした彼は、プレッシャーのもとでプレーできている。それに、メッシは大事なPKをバルセロナでも外している。バルセロナとアルゼンチン代表でのメッシのプレーが対照的に見えるのは、ピッチの中で行なわれていることに違いがあるからだろう。

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