中国人記者をギャフンと言わせた、
W杯現場の「サッカー国際情勢」 (2ページ目)
「ところで、お前の国は出ていないのに、なんでここで偉そうな顔しているんだよ?」
痛烈な一撃に、中国人記者は黙ってしまった。W杯は戦いの場である。サッカー強国には絶対的な栄誉が与えられる。アルゼンチンの記者がその威を借りるのは筋違いなような気もするが、それが現実である。
「こんな代表なら負けたほうがいいよ」
日本国内では大会前に一時、そんなムードも漂ったが、こういう現場で各国記者と渡り合った人間に、そんな台詞は吐けない。勝者と敗者ではっきり明暗が別れる世界。負けたらひたすら惨めなのだ。
そんなW杯を開催するロシアだが、国を挙げて盛り上がっているのだろうか?
正直に言って、筆者が過去に取材した日韓やドイツ、南アフリカ、ブラジルと比較して、熱狂度は低い。開幕戦でロシアがサウジアラビアを5-0と大差で下したにもかかわらず、「それはよかったね」というようなつつましい喜び方である。ロシア人特有の、物事を冷めた目で見る気質のせいもあるのだろうが、ラテン人のように、感情を爆発させる雰囲気はない。
開幕戦を、首都モスクワの人々はどのように受け止めたのか。市内の撮影に行ったカメラマンも、「思った以上に盛り上がりに欠けていた」という感想だった。赤の広場などでのイベントもない。地下鉄の車両の中では試合が放映されていたが、ゴールが入ったときでさえ、大勢が乗っている車両で、歓喜の声を小さくあげたおじさんが1人いただけだったという。
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