スペイン国王杯決勝直前。セビージャの「バルサいじめ」が冴える理由 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 プロ選手としては大成していない。レアル・ソシエダでは1年上にハビエル・デ・ペドロという真の天才レフティがいたことで、トップではポジションが与えられなかった。2部、3部のクラブを転々とした後、2部のロルカで引退と同時に33歳で監督業をスタートした。チームメイト全員が納得したらしいので、指導者の才覚があったのだろう。

 35歳の時にはアルメリアで2部リーグの最優秀監督賞を受賞し、36歳で強豪バレンシアの監督を任されている。その戦術は斬新だった。ときにはセンターバックに強力なプレッシャーをかける相手に対し、サイドバックまで開かせてプレッシング戦術を無効にすることも。とことんプレー効率を追求し、固定概念に囚われない。

 例えばエメリは、守備をさぼりがちでムラがあった天才型MFのエベル・バネガもうまく使っている。攻撃では最終ラインの前で組み立てに参加させ、守備ではトップ下でコースだけ切らせた。攻守でボランチと縦にスライドさせることによって、バネガとチームの融合点を見つけたのである。

 戦術マニアだが、決して頭でっかちではない。

 また、カウンターは「最短距離で喉元に刃を」というのが基本だが、エメリは縦の速さだけに固執しない。セビージャでは両サイドを崩せる攻撃力を確立。カンプ・ノウでのバルサ戦の先制点も、ミカエル・クローンデーリ、トレムリナスの2人で左サイドを崩した後、クロスを逆サイドのビトーロが押し込んでいる。縦だけでなく、横幅も巧妙に使う。

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