元レイソル鈴木大輔が語る、スペインデビューまでの「激動の90日間」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Juan Carlos Mancelas

 鈴木は刻々と厳しくなる状況でも一切動じなかった。心配する友人から、近況を尋ねられても、「わからない。でも、海外に行くのはもう決めてるから」とだけ答えていた。「今はニートみたいなもんだよ」と、待っている時間を開き直れた。あるいは、悪いように考えたら、いくらでもできただろう。しかし、彼はそれを無駄と捉えた。ジムに通い、ときに友人とフットサルをしながら、いつ呼ばれてもいいように体を作り、最善の準備をして、その日を待った。

<この状況でも自分を評価して声をかけてくれる日本のクラブがある。サイコーじゃないか。今までやってきたことは間違いじゃない>

 彼はどこまでも楽天的だった。言い換えれば、バカになることができた。

「厳しい条件にはなりましたけど、俺としては『練習参加だけなら、必ずできる。全部はねられるはずがない』という確信があって。そして、行けばどうにかなる、というのはありましたね。これがその時だ、と思って動き出していたから、そのまま諦められなかったんです。そんなとき、ナスティックから練習参加OKの連絡があって。飛行機のチケットを買って、次の日には向かいました」

 夜にバルセロナに着いた鈴木は、一泊した後、近郊のジローナでナスティックの試合を観戦した。そして翌日のオフには、フィジカルトレーナーとトレーニングを行なっている。これがテストなんじゃないか、と思うほどにきつかった。次の日には全体練習に参加した。久々にボールを使った練習で、緊張よりも楽しさに我を忘れてしまった。

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