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【Jリーグ】賛否両論の「秋春制」移行まで1年、野々村芳和チェアマンが最もこだわった「サッカーの質をいかに上げるか」 (4ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【世界のマーケットとつながること】

「次のシーズンに向けたチーム作りの場所と考えるなら、キャンプ地は国内でもいいと思うんです。コンサドーレの社長だった当時は、北海道がキャンプ地に選ばれたら多くのメリットが生まれる、と考えたものでした。Jクラブのキャンプ地にふさわしい施設が整えば、地域の子どもたちや大人たちが、サッカーに親しめる環境が充実することになりますので。

 その一方で、世界のマーケットに入っていくという視点に立つと、いろいろな国・クラブとコミュニケーションを取れるようにしていかなければいけない。オーストリアなどで行なわれるヨーロッパのプレシーズンのキャンプには、いろいろな国からチームが集まってきます。そこで直接的に情報を得る、自分たちの立ち位置を知るのは、ものすごく大切なことだと思うんです。

 日本国内でのキャンプに比べたら、費用はかかるでしょう。ただ、中長期的視点で世界のマーケットに飛び込み、コミュニティを拡げることに価値がある──と考えるクラブも出てくるのでは。キャンプ地では、いろいろなクラブのスタッフが練習試合を見ながら、『あの7番はいいね、何歳? 契約はどうなっている?』といった、生のやり取りをしています」

 Jリーグのクラブがキャンプに参加すれば、日本人選手も「見られる」対象になる。それによって、移籍との向き合い方が変わってくるかもしれない。

「たとえば、ある選手にヨーロッパの2部のチームからオファーが届いたとします。これまでは『選手の挑戦を後押しする』といった姿勢で、本人の意思を優先するクラブが多かったと思います。

 ですが、『オファーが来たあの国の2部は、これくらいのレベル』ということがわかっていれば、『あのクラブに行くのなら、ウチの選手としてJ1でプレーしたほうがいい』とか、『キミの成長を考えたら、もっと上のレベルのクラブに行かせたい』と言えるでしょう。

 世界のマーケットとつながることで、各クラブの強化責任者がそういう判断を下せるようになる──と思うのです」

 シーズン移行によって、Jリーグの競技レベルを上げる。そこから見えてくるものは多く、現在のJリーグが抱える大きな課題を解決する糸口も見えてくる。

(つづく)

◆野々村チェアマン・後編>>「Jリーガーの海外移籍をクラブはビジネスとして扱うべき」


【profile】
野々村芳和(ののむら・よしかづ)
1972年5月8日生まれ、静岡県清水市(現・静岡市清水区)出身。現役時のポジション=MF。清水東高時代に高校選手権に2度出場。慶應義塾大に進学したのち、1995年にジェフユナイテッド市原に加入する。2000年にコンサドーレ札幌に移籍し、翌年に29歳で現役を引退。2013年から札幌の代表取締役社長となり、2015年にJリーグ理事に選任。2022年3月に第6代Jリーグチェアマンに就任する。

著者プロフィール

  • 戸塚 啓

    戸塚 啓 (とつか・けい)

    スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本サッカー』(小学館)

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