【Jリーグ】賛否両論の「秋春制」移行まで1年、野々村芳和チェアマンが最もこだわった「サッカーの質をいかに上げるか」 (2ページ目)
【クラブの持続可能な成長を後押し】
「サッカーの質を上げていくのは、Jリーグの持続可能な発展のために、絶対に必要なことです。今の日本の環境下だと、6月から始まる蒸し暑さの影響で、7月、8月、9月のパフォーマンスがどうしても落ちてしまう。気候の問題は大きい。
その影響をできるだけ抑えて、よりパフォーマンスが上がる環境を作ろうというのが、僕のなかでシーズンを変える大きなポイントのひとつでした」
野々村チェアマンが言う「サッカーの質を上げる」とは、実は多くの意味を含んでいる。
シーズンを通して高いクオリティのサッカーが繰り広げられれば、まずもって選手の成長につながる。目の離せない試合は、観客を惹きつける。観客動員が増え、クラブは入場料収入がアップする。
リーグのレベルが高いことを数字で示せれば、選手の獲得にあたって「成長できるリーグ」と言うことができる。国内外から有望な選手を獲得できる可能性が高まる。
日本を含めて代表で活躍している選手(あるいは、そうした実績を持つ選手)が増え、リーグの競技力が国際的に認められれば、放映権料の交渉を有利に進めることができるだろう。マーチャンダイジングの売上げも伸びる。収入の柱となるスポンサー収入の増加も見込める。
つまり、クラブが増収となる。増収分は選手のサラリーはもちろん、後回しにされがちな育成部門への投資に向けられる期待がある。いい選手を育て、トップチームに昇格させ、世界へ飛躍させていく──クラブの持続可能な成長を後押しする循環が生まれる。
「選手なら『より高いレベルでプレーしたい』と思うのは当然です。だからヨーロッパへ目が向くわけですが、そのなかでJリーグを選んでもらえる環境をどう作るか、ということを我々は考えています。
そこにはふたつの要素があって、ひとつは高い年俸がもらえるリーグであること。もうひとつがピッチ上のクオリティで、『Jリーグでプレーすれば成長できる。Jリーグからヨーロッパの5大リーグへ行ける』と、選手たちに実感してもらうこと。それは日本人選手だけでなく、ブラジルの若い選手にも、東南アジアの有望な選手にも、そう思ってもらえるようにしたい。
ここで言う『成長できる』とは、たくさんのお客さんのなかで高いレベルの試合を重ねていくこと。そのために、サッカーの質を上げる必要があるのです。
いい選手、いい指導者がJリーグを選んでくれれば、ピッチ上のクオリティは上がるでしょう。ただ、Jリーグとしてすぐにでもできることは、ピッチ上の質向上を促すこと。それがシーズン移行につながってくるわけです。
Jリーグのクラブが世界のサッカーマーケットに入っていくには、同じシーズンで選手が行き来するようにしないと、ビジネス的な成長が見込めない。ピッチ上のクオリティも上がらない。そういう問題意識が、シーズン移行の根本にあります」
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