【Jリーグ】賛否両論の「秋春制」移行まで1年、野々村芳和チェアマンが最もこだわった「サッカーの質をいかに上げるか」 (3ページ目)
【10年後の日本サッカーを考えて】
1993年のJリーグ開幕当初の市場規模は、前年にプレミアリーグとしてリニューアルされたイングランドとほぼ同じだった。1990年前半当時の日本は経済大国で、Jリーグのクラブは現役のブラジル代表を獲得することができた。
それがどうだろう。
イングランドはサッカーの母国であり、日本は極東の新興国として成長を遂げてきた違いはあるものの、この30数年でプレミアリーグとJリーグの市場規模には圧倒的なまでの開きがある。
2024年シーズンのJリーグ全60チームの売上高は、1725億円だった。それに対して、プレミアリーグのチェルシーは、2023-24シーズンに900億円を売り上げている。Jリーグ全体のほぼ半分を、チェルシーだけで稼いでいるのだ。
「だからといって、30年後も現状と同じだとは限らない──という思いで、Jリーグを動かしていっていいと思うんです。
今この時点で、世界の5大リーグと言えば、イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスでしょう。だとしたら、30年後の5大リーグに『Jリーグ』が入るようにしたい。そのために今、できることをやっていきましょうよ、と。
シーズン制についてあらためて言えば、地域やクラブのサイズによって抱える問題は異なります。
僕自身が2013年3月から2022年3月まで北海道コンサドーレ札幌の社長を務め、当時からさまざまなクラブの方とお話をしてきたので、それはもう十分にわかっているつもりです。目の前の今、戦っているシーズンをどうやって乗り越えていくのか、必死で格闘しているクラブがあることも承知しています。
そのうえで、5年後、10年後の日本サッカーを考えていきたい」
シーズンが移行すれば、プレシーズンの準備の時期が変わる。これまでは1月、2月に温暖な沖縄や九州がキャンプ地として選ばれてきたが、秋春制では6月から7月がキャンプ期間となる。
ここでJリーグは、グローバルな視点に立つ。
ヨーロッパの2025-26シーズン開幕前のタイミングで、オーストリアのキャンプ地視察をアレンジしたのだ。現地では各国リーグの数多のクラブが、来たるべき新シーズンに向けてキャンプを行なっていた。Jリーグの複数のクラブから、社長や強化担当者が現地に足を運んだ。
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