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【Jリーグ連載】東京ヴェルディのアカデミーに浸透し続けてきた「うまいフィルター」の弊害 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 自らが設定したフィルターを通して、技術レベルが高い選手をチームに残すことは、ヴェルディならではのよさだとしても、「あまり度がすぎると、本当に小さい選手ばかりになっちゃうんで」と小笠原。「今は、そのフィルターをちょっと薄くしながらやっています。大きくて速いけど下手な選手を、どうにかうまくできないか。そういうことにも今は取り組んでいます」。

 事実、過去には"うまいフィルターが利きすぎてしまった"例もある。

「今、J1の他クラブで活躍している選手に、(ジュニアユースに入る時に)うちにも獲得のチャンスがあった選手がいます。でも、僕らは(獲得を)見送ったんです」

 そう話す小笠原が、自嘲気味に笑う。

「その時もまた、うまいフィルターをかけすぎちゃって......。だから、活躍しているのを見ると......ね」

 もちろん、「そのチームだから育ったのかもしれません」と小笠原が言うように、ヴェルディが獲得していたとして、彼らが同じように成長できたかはわからない。

「でも、ああいう選手がプロになるんだっていうのは、僕らの経験値になった。だったら、そういう子を辛抱強く育てていこうよっていうことも今はやっています。

 本当に失礼な話ですよね。ただ僕らが(評価を)間違えていただけなんですけど(苦笑)」

 この例を引くまでもなく、小笠原を筆頭とするヴェルディユースのコーチングスタッフが、センターバックに要求する技術レベルは高い。それゆえ、練習や試合で選手たちのプレーを見ながら、彼らは「これができないのか」と頭を抱えることも少なくないという。

 だが、FC東京のアカデミーでも指導経験のあるヘッドオブコーチングの中村忠にしてみれば、「ヴェルディは、センターバックに求める基準が高すぎる」と感じてしまう。

「大丈夫だよ、オガちゃん。今は鈍くても、やらせていけばできるようになるから」

 中村はそう言って、はやる小笠原を諭している。

(文中敬称略/つづく)

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