「ウチのサッカー部は本当になくなるの?」中学校の部活動改革はその後どうなっているのか (3ページ目)
【地元でサッカーを続けたい選手の受け皿をつくる】
他地域でも地域展開に向けた取り組みは進んでいる。この春、京都府京都市にできたサッカークラブ「山科ユナイテッド」がそのひとつだ。チームが拠点を置く山科区はベッドタウンとして発展してきたエリアで、元日本代表の松井大輔氏もこの地域の出身。サッカーの競技人口は多いが、中学生年代のクラブチームはセレクション型のチームがひとつあるだけだ。6つある公立中学も少子化が進み、サッカー部がない学校や単独で活動できない学校も少なくない。
中学校の部活動では完全下校時間が17時に決められているため、授業後にボールを蹴れるのは実質1時間程度。競技志向の高い選手は活動場所を求めて、自転車や公共交通機関を使い、京都市内のチームや隣接する滋賀県のチームまで通うが、友だちとサッカーを楽しみたいエンジョイ志向が強い選手にはハードルが高い。金銭面や保護者の送迎負担なども大きいため、小学生から中学生になるタイミングでサッカーを離れる選手が多いという。
そうした地域課題を耳にし、もともと公立高校で教諭をしていた松尾真次代表が立ち上げたのが「山科ユナイテッド」だ。移動や費用の問題でサッカーをあきらめる選手が出ないように、金銭的な負担もなるべく抑えている。
クラブチームで活動する際に必要な月謝も地域相場よりも低く設定。高校で指導していた際は入学時に練習着やジャージ、バッグなどを一式購入してもらっていたが、山科ユナイテッドでは試合で使用するユニフォーム以外購入がない。保護者の費用負担を少しでも下げるため、山科区の企業を中心にスポンサーも募っており、すでに10社以上が名乗りをあげているという。
昨年10月末に初めて体験会を実施したが、その時は実際にどれだけ人が集まりチームとして活動できるかわからなかったため、「絶対に入る」と答えた選手は6人だった。入団を悩んでいる選手には、確実にチーム活動ができる既存のチームを勧めることもあった。しかし、その後も何度か体験会を開き、最終的に今年春には15人に。
入団したうちの数人は、通う中学校にサッカー部がなく区外のクラブチームしか選択肢がなかったが、送迎が難しくサッカーを諦めかけていた選手たちだった。地域にクラブチームがあったからこそ、サッカーを続ける選択肢が生まれたケースだ。
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