Jリーグはシーズン半ばもいまだ混戦 福田正博が挙げる「上位争いをかき回してほしい」注目のチームとは? (2ページ目)
【ポゼッションサッカーで負けにくい柏】
昨季17位で首の皮一枚J1に踏みとどまった柏は、今季からリカルド・ロドリゲス監督を迎えた。徳島ヴォルティスや浦和レッズを率いた手腕を振り返り、個人的には開幕前から柏にはリカルド監督の志向するサッカーがフィットすると見ていたのだが、それでもこれほどの好成績で進むとは思っていなかった。
リカルド監督がスペイン人で、選手のポジショニングを重視するポゼッションサッカーという部分を切り抜くと、攻撃的なサッカーを志向する監督に思われるかもしれない。だが、実際は彼のポゼッションサッカーは、"失点リスク"を減らすためにある。
それは数字にも表れている。第18節終了時点での総失点数は、リーグ最少12失点のサンフレッチェ広島に次ぐ14失点で2番目。対して総得点数は21ゴールでリーグ9番目と特別多いわけではない。
得点も失点も少ないので、負けない確率が高まっている。柏の引き分け数は7試合で、リーグ最多8試合の川崎に次ぐ。敗戦数2はリーグトップの少なさ。勝ち点1を確実に積み上げて、上位争いに加わっているのだ。
選手起用でもリカルド監督らしいと思うのが、FWの使い方だ。細谷真大という日本代表FWではなく、垣田裕暉や木下康介を重用している。垣田は前線でよく走ってハードワークし、チャンスの時は泥臭くゴールを決める勝負強さがある。そうした選手をフィニッシュワークのところに起用するのは、リカルド監督のサッカー観が実によく表れていると思う。
リカルド監督と垣田は徳島時代に一緒にJ1昇格を勝ち取ったことがあり、信頼関係が構築されている。その点で言えば小泉佳穂を獲得できたのも大きい。マチェイ・スコルジャ体制の浦和でも戦力として期待されていたが、浦和時代に監督と中心選手の関係性だったリカルド監督のもとへと移籍した。
監督としては、自身の志向するサッカーを理解する選手たちがいるのは心強い。彼らが監督の意図をピッチでしっかり体現することは、就任1年目のリカルド監督のサッカーの浸透を助けている面はあるはずだ。
選手個々にフォーカスすれば、熊坂光希の存在は欠くことができないものがある。中盤の底でのインターセプトや相手陣でのパス展開など、彼がリカルド監督の求めるボールの動かし方を成立させていると言えるだろう。
柏はこれから先も得点力で苦しむかもしれないが、ポゼッションができる限り大きく崩れることはないのではと見ている。これからも上位争いをかき回してほしいと思う。
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