Jリーグ注目の新監督の采配に疑問 今季のFC東京、鹿島アントラーズはどうなる? (3ページ目)
自由を謳ったジーコジャパン、さらには岡田ジャパンの途中まで、"流動的サッカー"を否定する人は日本には皆無だった。攻守が切り替わった瞬間、「それではプレスはかからない」と言う人も皆無だった。テレビ解説者のなかには、いまなお流動的サッカーを頓着なく肯定する人がいる。古典的というか非欧州的なサッカーが平気でまかりとおっている。
鬼木監督もそのひとりなのか。川崎時代、家長昭博が右から左に動くことを特に問題にしていなかった過去がある。だが荒木の場合はその比ではない。マイボール時は左サイドを含む真ん中付近でプレーし、相手ボールになると、右サイドをカバーしようと数秒かけて右サイドハーフの位置に戻るのだ。
これを是認したことと、湘南に0-1で敗れたことは少なからず関係していると見るが、後半の早い時間(21分)に荒木を下げ、右サイドアタッカーの濃野公人を送り込んだ同監督の采配には、自らの作戦を反省しているようにも見受けられた。鬼木監督は荒木をこれからどのように使うのか。
ちなみに、鹿島の元監督でパリ五輪を戦った大岩剛U-23日本代表監督は、荒木を4-3-3のインサイドハーフでも起用した。相手ボールになるとワントップ脇に立たせ、4-4-2の「2」の一角として該当する箇所をカバーさせた。
監督の善し悪しは荒木の使い方で判断することができると、筆者は見ている。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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