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Jリーグ注目の新監督の采配に疑問 今季のFC東京、鹿島アントラーズはどうなる?

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

連載第28回
杉山茂樹の「看過できない」

 FC東京はJリーグで最も"大きな名前"のチームである。首都東京の頭にFC(フットボールクラブ)を据えたチーム名は、日本代表にも迫るメジャー感だ。しかし、2000年にJ1昇格して以来、優勝したことが一度もない。2015年のファーストステージと2019シーズンに2位を経験しているが、相場はJリーグ中位だ。大層な名前に負けた状態にあると言っても過言ではない。

 攻撃的サッカーという旗を掲げた原博実監督時代(2002~05年、2007年)は他との差別化が図られていた。守備的サッカーに染まる当時の日本サッカー界に新風を吹かす役を果たしていた。だがそれは一時的で、結局、FC東京というクラブとしての色にはなり得なかった。誰が監督をやっても成績もサッカーも中庸。気がつけばJリーグにおいてインパクト不足の地味な存在になっていた。

 今季、新就任した松橋力蔵監督はアルビレックス新潟で昨季まで3シーズン、目を引くサッカーを展開した。J1での成績こそ10位と16位だが、攻撃的なサッカーの中身は成績以上に魅力的だった。「結果と娯楽性をクルマの両輪のような関係で追究せよ」と筆者に説いたのは故ヨハン・クライフだが、新潟は娯楽性のほうが勝るように見えるサッカーをした。

「首都東京のチームには華がなくてはいけない」と言ったのは原元監督だが、FC東京が華を備えたチームに変身すれば、Jリーグはもう少し盛り上がるはずだ。横浜FCとの開幕戦、松橋新監督への期待は募った。

 結果は1-0。勝利したのはFC東京だった。試合後の会見で、松橋監督はまずこう述べた。

「内容よりも勝ち点3を奪えたことがすべてだと思っています」

 実際、内容は悪かった。J2から昇格してきた横浜FCに対して、スコアが逆になっていてもおかしくない劣勢を強いられた。

 驚かされたのはそれだけではない。松橋監督といえば新潟時代、5バックになりやすい3バックで戦った試しは1度もない、バリバリ攻撃的サッカー系にカテゴライズされる指揮官である。ところがFC東京の新監督として迎えたこの開幕戦は違った。横浜FCという昇格組相手に、5バック同然の守備的サッカーで臨んだのだ。相手も同様の布陣で臨んだので、ピッチには守備的サッカー同士の攻防が展開された。

 しかし、"防戦度"で上回ったのはFC東京だ。支配率でも40対60で劣った。リスクを犯さないサッカー。試合は面白かったか否かで言えば、完全に後者。戦犯はFC東京、松橋監督にあると言いたくなる。FC東京は今季も従来までの像に留まってしまうのか。首都東京のチームがこの有様ではJリーグは華やがない。困った話とはこのことである。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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