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Jリーグ注目の新監督の采配に疑問 今季のFC東京、鹿島アントラーズはどうなる? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【荒木遼太郎の起用法は?】

 開幕戦でもうひとり、見過ごせない采配をした監督がいた。鹿島アントラーズの鬼木達新監督である。川崎フロンターレで一時代を築いた監督が、2016年シーズンを最後に優勝から遠ざかっている鹿島を立て直すことができるのか。湘南ベルマーレを相手に開幕戦でどんなサッカーを見せるのか。

今季開幕戦で選手たちに指示を与える鹿島アントラーズの鬼木達監督 photo by Sano Miki今季開幕戦で選手たちに指示を与える鹿島アントラーズの鬼木達監督 photo by Sano Miki 筆者はスタメンに目を向けた瞬間、早くも疑心暗鬼に陥ることになった。4-4-2の右サイドハーフのポジションに、FC東京からレンタルバックしてきた荒木遼太郎の名前を見つけたからだ。

 荒木は案の定、マイボールになると右から中央、さらには左サイドにまで「出張」した。俗に言う流動的な動きをした。ただし、監督の指示を無視して動いている様子ではなかった。その流動的な動きを鬼木監督は是認していた。

 荒木の適性がサイドにないことは、鹿島に入団当初からハッキリしていた。カバーエリアの狭さに難点を抱えていた。だがFC東京にレンタル移籍した昨季、1トップ下あるいは1トップ脇など、中央の高い位置でアタッカー然とした役割を与えられると、水を得た魚のように活躍。その余勢を駆りU-23日本代表に招集されてパリ五輪に出場。光るプレーを見せた。ブレイクしたわけだ。

 だが鬼木監督は、その流れを無視するかのように荒木を右サイドハーフに据えた。その結果、鹿島の右サイドは、マイボール時に右SBの小池龍太ひとりになる時間が大半を占めた。ボールはそこで円滑に回りにくい仕組みになっていた。右の最深部へ侵入し、マイナスに折り返す攻撃は望み薄の状況にあった。攻撃のルートは狭かった。

 そしてボールを奪われる位置はおのずと真ん中から左寄りに偏った。相手ボールに転じると、荒木が「出張先」から戻ってくるまでの数秒間、鹿島の右サイド前方には空白が生まれた。これでは相手の攻撃に蓋をすることはできない。プレスはかからない。

 プレッシングの本場、欧州ではまず見かけないプレーである。それは1990年台前半、欧州を訪れた筆者が、一番驚かされたカルチャーショックでもあった。プレッシングを叫びながらブラジル式の4-2-2-2で戦った当時の加茂ジャパンと比較すれば、その差は一目瞭然となった。

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