Jリーグ2025でも10試合開催 集客力抜群の国立競技場は見やすいサッカースタジアムなのか (4ページ目)
【どの競技にも使いにくい中途半端なものに】
やはり、陸上競技兼用では、どんな設計にしても試合の見やすさは損なわれてしまう。そのため、国立競技場は国内カップ戦や親善試合では使用されても、W杯予選などの公式戦では使用されていない(女子代表のパリ五輪予選では使用された)。
ラグビーでも、すぐ近くに秩父宮ラグビー場というすばらしい専用スタジアムがあるので、国立競技場が使用されるのはごく一部の試合だけだ。
一方、サッカー、ラグビーに使用するためには芝生の保護が必要なので、陸上競技の投擲種目(ハンマー投げややり投げ)での使用が制限されるなど、陸上競技側にとっても兼用スタジアムは使い勝手がよくない。そもそも、世界陸上などを除けば陸上競技の集客力は高くないから、国立競技場は大きすぎる(使用料が高すぎる)のだ。
結局、多目的競技場を目指した結果として、国立競技場はどの競技にとっても使いにくい中途半端なものになってしまった。
僕が初めて国立競技場を訪れたのは、1964年10月の東京五輪の時のことだった。サッカーの予選リーグ開幕戦、ハンガリー対モロッコの試合。名手ベネ・フェレンツがひとりで6ゴールを決めてハンガリーが6対0で勝利した試合だった。そして、それが僕にとってのサッカーとの出会いの瞬間だった。
次回は、懐かしい旧国立競技場の話をしよう。
著者プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2025年、生涯観戦試合数は7500試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。
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