Jリーグ2025でも10試合開催 集客力抜群の国立競技場は見やすいサッカースタジアムなのか (3ページ目)
【サッカーも見やすいが......】
陸上競技場との兼用としては、国立競技場はサッカーの試合も見やすいスタジアムだとは思う。
日本最大で、国立と同じように陸上と球技の兼用である日産スタジアム(横浜国際総合競技場、収容7万2327人)と比べれば、試合が見やすいのは一目瞭然。日産スタジアムは2002年にサッカー、2019年にラグビーのW杯決勝が行なわれたスタジアムだが、試合が見にくいので有名だ。
最大の理由はスタンドの傾斜角だ。サッカーやラグビーの試合は上から見下ろすように、つまり俯瞰的に見たほうが全体の動きがわかりやすい。しかし、記者席もある日産スタジアムの1層目スタンドの傾斜は17度という緩やかさだから、俯瞰的に見ることがまったくできないのだ。
しかも、日産スタジアムのスタンド最前列は陸上トラックからの距離が遠い(陸上競技に使用する時にはそのほうが運営しやすい)。そして、メイン、バックの両スタンドはカーブがなく直線状なので、サッカーのCKスポット付近でもピッチとスタンドの距離はかなり遠くなってしまう。
それに対して、国立競技場は1層目の傾斜が20度、2層目が29度、3層目が34度となっており、上層スタンドからはかなり俯瞰的に見ることができる。また、国立競技場のスタンド最前列は日産スタジアムに比べればトラックからの距離が短いし、スタンドがカーブしているので、ハーフライン付近よりコーナーの部分ではピッチが近くなっている。
しかし、「国立競技場はサッカーも見やすい」といっても、それはあくまで「陸上競技兼用スタジアムとしては」という留保付きであって、球技専用スタジアムとは比較にならない。
スタンドの傾斜角は大きく、たとえば記者席はメインスタンド3層目に設置されているからピッチを俯瞰できる。だが、「高い」ということはピッチ面までの垂直距離があるうえに、陸上トラックがあるだけ水平的な距離も遠くなるから、バックスタンド側の選手の背番号はほとんど視認できないし、中盤の選手でも「6」なのか「8」なのかが見えづらい。
たとえば、イタリア・ミラノのスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ(サンシーロ)の記者席も同じように非常に高い位置にあるが、ここはもちろんサッカー専用だから、ピッチまでの水平距離は短く、上空から見下ろすような感覚でも背番号はよく見える。
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