かつてセクシーフットボールで日本一になった野洲高校の今 全国の舞台から遠ざかる苦境の要因は (4ページ目)
【地元のお兄ちゃんの受け皿になれるか】
古豪と言われてもおかしくない状況まで追い込まれているが、何もせずに指をくわえているわけではない。ゴールキーパー出身の横江監督が自分にできることは何かないかと考え、手始めに1年前からスタートさせたのが小中学生を対称としたGKスクールだ。
専門の指導者がいなくて困っているチームが多い指導現場を助けるため、そして野洲のグラウンドでプレーすることでチームを身近に知ってもらいたいとの狙いがあるという。
日本一から20年近い歳月がたち、現役だった選手たちが指導者になるケースも増えている。「母校なのでうまくあってほしいし、強くあってほしい」と話すのは、名古屋グランパスなどでプレーした望月嶺臣だ。現在は自らが立ち上げたLUA FCというチームで中学生を指導。今年の選手権でも母校を応援するため、試合会場に足を運んでいた。
彼だけでなく、テクニックと判断を重視した野洲イズムを選手に叩き込む指導者は少なくない。セゾンFCで主軸だった選手の多くが野洲へ進み、全国優勝した時と同じように、現在の野洲が選手の受け皿になることができれば、明るい兆しは見えてくるだろう。「山本先生と岩谷さんが蒔いてくださった種はあって、みんなが何とか野洲を大事にしたいと思ってくれているのはありがたい限り」(横江監督)。
横江監督はこう口にする。「まずはもう1回全国に行きたい。地元のお兄ちゃんが野洲高校に行って、全国の舞台や国立で活躍している姿が僕の中では強烈だった。公立高校は身近な人がヒーローになれるのがよさだと思っている。それにフィジカル全盛の時代で、選手がアスリート化しているなかだからこそ意地を見せたい。古い考え方かもしれませんが、サッカーはそれだけではないと示したい」。
セクシーフットボールの鮮烈な印象は、今なお多くの人に残っている。脈々と積み上げてきた歴史を絶やさないためにも、このまま終わるわけにはいかない。
著者プロフィール
森田将義 (もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。10代の頃から、在阪のテレビ局でリサーチとして活動。2011年からフリーライターとしてU-18を主に育成年代のサッカーを取材し、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿を行なう。
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