ミッチェル・デュークが「ワクワクする」と語るFC町田ゼルビア優勝への挑戦「いや、練習は本当にきついんだよ(笑)」 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【こんなにワクワクする挑戦はほかにない】

 フットボール発祥国の公共放送協会もそんな町田に注目し、チームで唯一、英語を母国語とするデュークを取材したという。

「町田は世界的にも注目され始めていると思う。ひと月くらい前に、『BBC』の取材を受けたくらいだからね。彼らは今季の町田と、2015-16シーズンにプレミアリーグで奇跡的な優勝を遂げたレスター・シティを重ね合わせていた。両チームとも、シーズンが始まる前は、誰も優勝するなんて思っていなかった。願わくば、レスターのように、僕らも最後まで首位で駆け抜けられたらいい。そんな偉業が達成できたら、町田だけでなく、Jリーグや日本のサッカーにも、注目が集まるはずだからね」

 ただし、レスターはプレミアリーグで優勝した前のシーズンも、1部リーグを戦っていた。逆に町田はJ1初挑戦ながら、移籍情報サイト『トランスファーマルクト』によると、今季のJ1で所属選手の評価額が2位。昇格組ながら、潤沢な資金で質の高い選手を集め、リーグ屈指の陣容を誇っていると言える。

「ただ町田には、プロの指導歴がまだ1年半しかない監督がいるよね。彼の存在が、僕らのストーリーをさらに特別なものにしていると思う。昨季に町田を率いるまで、高校生を指導したことしかなかったのに、プロ1年目にいきなりJ2を制覇したんだ。すごいことだ。

 彼は成功する監督に必要な要素を備えている人だと思う。鋼のようなメンタリティ、明確なアイデンティティとフィロソフィー、豊かな人間性とカリスマ。それらが揺らぐことはなく、たとえうまくいかなかったとしても、自らの信念を貫いている。しかも結果がついてきているから、チームの結束が崩れることはなく、すばらしいチームスピリットが維持されているんだ。

 いや、練習は本当にきついんだよ(笑)。それでも選手がついていくのは、監督についていけば、成功できると信じているからなんだ」

 笑顔で生き生きと話すデュークは、千載一遇のチャレンジを心から楽しんでいるように見える。W杯でゴールを決めて、オーストラリアのサッカー史に名を刻んだ彼は、町田について語る時も、「歴史」という言葉を好んで使った。

「昨季、僕らはクラブ史上初のJ1昇格という歴史を作った。そして今、新たな歴史を作ろうとしている。こんなにワクワクする挑戦は、ほかにないと思う。あらためて、町田の壮大なプロジェクトの一部を担えていることに感謝したい」

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