45歳・稲本潤一、41歳・今野泰幸が現役にこだわる理由 「引退」についての率直な思いも吐露した (4ページ目)

  • 高村美砂●取材・構成 text by Takamura Misa

 その過程では悩んだ時期も、メンタル的に苦しんだ時期もあったし、いいことも悪いことも経験したけど......っていうような経験に基づく話をできたらな、と。ちなみに、イナさん、もう会員になってくれました?

稲本 いや......Xで情報を見て、でもこれ以上先に進んだら、変なお金が発生しそうやからビビってボタンを押さなかった。

今野 変なお金じゃないから!(笑)。でも、会員になってくれる人たちから「こんなことを聞いてみたい」「こういうことを一緒にしませんか」みたいな話があって、それに自分が興味を惹かれたら、仕事としてやってみるのもいいかなとは思っています。そうやって人のつながりを広げていくことも目的のひとつだから。

稲本 今ちゃんがそういうのをやるイメージ、なかったわ~。

今野 誰も入らないかもしれないけど(笑)。でも、イメージがないからいいというか。それによって、世界が広がるかもしれないし、何よりいろんな人とコミュニケーションを図るとか、サッカー以外のいろんな話をできるようになるのも、この先の自分には必要なことだと思いますしね。

 いつか引退する時に今の自分のまま外の世界に出ても、何もできないんじゃないかって不安だし。だから自分の成長のためにも、やってみることにしました。

――稲本選手は"引退"がよぎることはありますか?

稲本 もちろん、めちゃめちゃよぎるし、セカンドキャリアについて考えることもあります。今はとりあえず、選手を続けながらB級ライセンスまで取得しているのも、引退後は指導者の道に進みたいって思いもあってこそなので。

 ここ最近は、メディアで試合の解説をしたり、ゲストに呼んでいただくこともありますけど、自分の性格を考えると、いずれメディアの世界の仕事は飽きそうな気がしているんです。今はまだ現役やからそれも楽しめているけど、選手じゃなくなって、単に試合を見て感じたことを話して終わり、では自分自身への刺激というか、サッカーを通じて得てきた気持ちの抑揚みたいなものも感じられなくなっていくんじゃないか、と。

 それなら、現場で勝った負けた、これがうまくいった、ここはうまくいかない、みたいな浮き沈みに直面しながら、いろんな苦労と向き合っているほうが楽しいと思えそうな気がする。

今野 指導するカテゴリーにはこだわりますか?

稲本 正直、できるだけ上のカテゴリーから見てみたいとは思っているかな。選手時代もそうやったけど、一番頂点を知ったうえで、カテゴリーを下げていくほうが見えるものも違っていく気もするしね。自分が選手としてお世話になったクラブで、今度は指導者としての関わりを持てたらいいなとも思う。海外での指導は正直、家族の問題もあって現実的じゃないから、基本は国内で考えているけど。

(つづく)◆稲本潤一&今野泰幸は今のJリーグをどう見ているか?>>

稲本潤一(いなもと・じゅんいち)
1979年9月18日生まれ。大阪府出身。1997年、ガンバ大阪の下部組織からトップチームに昇格。若くしてチームの中心選手として奮闘した。そして2001年、アーセナルへ移籍。以降、フラム、WBA、カーディフ、ガラタサライ、フランクフルト、レンヌでプレーし、2010年に帰国。川崎フロンターレに加入した。その後、北海道コンサドーレ札幌、SC相模原に在籍し、2022年に南葛SC入り。その間、日本代表でも活躍。世代別代表では、1995年U-17世界選手権(現U-17W杯)、1999年ワールドユース(現U-20W杯)、2000年シドニー五輪に出場。A代表では、2002年、2006年、2010年と3大会連続でW杯に出場した。国際Aマッチ出場82試合、5得点。

今野泰幸(こんの・やすゆき)
1983年1月25日生まれ。宮城県出身。東北高卒業後、北海道コンサドーレ札幌入り。1年目から出場機会を得て、2年目にはチームの主軸として存在感を示す。2004年にFC東京に完全移籍。ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)、天皇杯などの栄冠獲得に力を発揮した。そして2012年、ガンバ大阪へ移籍。2014年のリーグ制覇をはじめ、数々のタイトル獲得に貢献した。その後、2019年夏、ジュビロ磐田へ移籍。2022年に南葛SCに加入した。日本代表でも常に中軸として活躍。世代別代表では2003年ワールドユース(現U-20W杯)、2004年アテネ五輪に出場。A代表でも、2010年、2014年とW杯に2度出場した。国際Aマッチ出場93試合、4得点

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