38歳・水野晃樹「ベンチ外になった時に、すっげぇ悔しくて...」 だからこそJ3でプレーする今も「まだまだ戦えると思った」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 ただ、特に30代に入ってからは、仮に自分が試合に出られなくても、出ている選手がピッチで気持ちよくプレーできるような声掛けや立ち回りをすることは増えました。グルージャでは試合に絡めていない時も、勝ったら必ずゴール裏にいって、サポーターの前で『バモ!』って叫んで、盛り上げていますしね。もともとの僕はそんなタイプでもないし、本音を言えば、そういう自分ってすげぇ、嫌なんですけど(笑)。

 でも、それをすることでサポーターが応援してあげたいと思ってくれたり、一緒に戦っている選手が気持ちよくサッカーができるのなら、それも自分を求めてくれたクラブへの貢献だろう、と。キャリアのなかで、いろんなチームを見てきて、そういうこともわかるようになったからこそ、自分を押し殺して無理しています(笑)。

 それもサッカーの一部だし、残りのキャリアも短くなってきたなかで選手としてできることは全部、やりきりたいから。それでも、引退する時にはきっと後悔は残すでしょうけど」

 その言葉を聞きながら、前編の冒頭に記した写真撮影での姿を思い出す。マネージャーが用意した洗いたての練習着に袖を通しながら「サイズ合ってないんじゃない!? ピチピチじゃん!」と言って仲間の笑いを誘っていた水野の姿を、だ。

 とはいえ、そんなふうに心の柔軟さは持ち合わせるようになっても、ことプレーに関しては丸くなるつもりはない。彼の言葉にもあるとおり、試合に出られなければ悔しさを募らせ、常に"新しい水野晃樹"を模索しながらサッカーと向き合う。自分のなかに"悔しさ"がある限り、現役選手であり続けるつもりだ。

「相模原を(契約)満了になったあと、チームが決まらない時期は引退も考えたんです。『求めてくれるチームがあるならやったら』っていう嫁さんの言葉にも背中を押してもらって、はやぶさでもう一回、って気持ちになれたんですけど。でも、一度引退を考えたことで正直、自分のなかで突き詰めてきたものが崩れちゃったような感覚もあって。ピッチに立てばボールを蹴るのは楽しいし、ちゃんとプレーはしていたけど、メンタルとプレーのバランスをとるのが難しくなってしまった。

 だから、去年、Jリーグの舞台に戻るとなった時も、正直、どういう気持ちになるんだろうって手探りの自分もいたんです。でも、シーズンが始まって何試合か使ってもらったうえでベンチ外になった時に、すっげぇ、悔しくて。でも、それが自分としてはすごくうれしかった。変な言い方だけど、そういう気持ちが自分のなかにしっかりあるんだと再確認できて、まだまだ戦えると思いました」

 今の目標は、J3リーグで優勝すること。水野のキャリアにおいて唯一獲得していない国内タイトルだ。

「グルージャに加入する時から、ずっとその目標を描いていて去年も実現できなかったし、今年も現時点で最下位なので。簡単ではないのはわかっています。今はまず、プレーオフ出場圏の6位以内、が現実的な目標です。

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