「小野伸二に引っ張られて頑張れた」黄金世代のGK南雄太が振り返る26年のサッカー人生 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「同じ世代として誇らしかった」】

 小野のパスは、海外でも「シルク」と形容された。絹のように繊細で柔らかく、心地良い。当時は、中田英寿が人には合わせないような間合いで力強いパスを出していたことから、対比的に表現されたものだ。

「伸二は敵だと怖かったですが、味方だと、とにかく頼れる選手でした。ワールドユースもそうですが、同じ静岡の高校だったので、県選抜とかも一緒で、味方だと、試合が楽しくなるというか......。自分の世代の連中は、みんなそうだったんじゃないですかね。伸二と一緒だと、勝てるって信じられました。

 年を食えば食うほど、若い頃の嫉妬心のようなものは消えていきました。同じ世代の選手の活躍は、自分のことのようにうれしくなって。"負けてらんねぇ"の意味も変わってきました。刺激がありがたくて、同じ世代として誇らしかったですね。自分はこの世代に生まれることができて、とても運が良かったなって思っています」

 南には日本代表歴はない(招集は受けたが、試合出場はなかった)。しかし、ひとりのGKとして「ピッチで価値があるか?」を誰よりも追求してきた。そのストイックさは、他の黄金世代の選手たちにも負けていない。

「GKの場合、ミスはほとんどが失点に結びつくので、ミスして負けた試合は、すべて後悔が残ります。とくに自分の場合、ビッグセーバーではないと思っているので、ミス全般をなくすためにこだわって練習しているから、そこでミスが出るのは悔しい。クロスにかぶって失点したり、味方につけたボールをかっさらわれて失点したり、どれも同じように......」

 その信念で、40歳にしてチームを昇格させ、J1のピッチに戻ってきた。しかしひとつの輝いた時代は、確実に終わりを迎えようとしている。

 南より先に、高原、小野が現役引退を発表した。黄金世代で残る現役選手は、稲本と遠藤のふたりだけになった。Jリーガーは遠藤だけで、彼もシーズン後の去就が注目されている。

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