クォン・スンテが鹿島アントラーズでの7年間を振り返る 最初に発した日本語は? (4ページ目)
【何としても勝つという感覚】
2023年11月30日、今季の出場機会がないまま引退を発表した。3月8日の練習中に左腓腹筋損傷で全治2カ月の診断を受けた。その後、若手GKの指導にもあたる日々を過ごした。
鹿島での7年間が幕を閉じた。引退会見では鹿島のことを「自分の家」だと繰り返し強調した。
茨城県鹿嶋市は大都市圏からちょっと距離がある土地には違いないが、「楽しかったですよ。Kリーグ時代に過ごした全北のクラブハウス周辺は鹿島の"5倍くらい田舎"でしたから」。
見渡せば田んぼ、農機具という環境に比べれば、マクドナルドやスターバックスがある鹿島は「新世界」だったという。
最後に「韓国人選手としてクラブに対して示したことは何だったのか?」と聞いてみた。伝統的に多く在籍してきたブラジル人ではない、韓国人としての矜持を。
「やっぱり闘争心、強いメンタル、何としても勝つという感覚でしょうか。そして自分が鹿島でうまくやれば、韓国の後輩たちがここにやってくる道が開ける、そういう意識だったように思います」
その熱量たるや凄まじかったのだろう。引退後は「とにかく家族と休みたい。後は何も考えていない」と言う。
(おわり)
クォン・スンテ
權純泰/1984年9月11日生まれ。韓国江原道江陵市出身。GK。全州大学から2006年にKリーグ全北現代モータースに入団。2011-12年の尚武(兵役)でのプレーを経て、2016年まで在籍。Kリーグ優勝3回、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝2回を経験した。韓国代表では国際Aマッチ6試合に出場。2017年に鹿島アントラーズへ移籍すると、2018年のACL優勝などに貢献。7シーズンのプレーの後、2023年シーズンをもって引退を発表した。
著者プロフィール
吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)
ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。
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